ジバンシィのネグリジェ。
オードリー・ルック2 ナイトガウン・ルック
- デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
- ピンクのシルクナイトガウン。ジバンシィ1965SS。白いレースが首、手首、すそに。七分袖ミニでスリットが両サイドに。丸首
- パテントの黒ブーツ(ガロッシュ)。レネ・マンシーニ
- ピンクのウール・コート。比翼
30代の女性のナイトウェアに、洗練と少女らしさという相反する要素を詰め込んだ見事なデザインを、エレガントなヘアスタイルで着こなすオードリー。彼女が誰よりも洗練されていた理由のひとつは、やはり、色々なヘアスタイルを流行させてきた点にあります。ファッションとは、つまるところトータルなものであり、自分自身を題材にする生きるアートなのです。
オードリーはそれを誰よりも知る人だったからこそ、ファッションの中のリアルとファンタジーの要素の中の、ファンタジーのみをピックアップし、「永遠の妖精」のタイトルを勝ち取ったのでした。リアル・クローズから生み出されるものは、ファッションではなく、ただのライフスタイルです。夢もアートも存在しない空間からファッションという言葉の要素は何一つ満たされることはないのです。
大人のオンナがスニーカーばかり履いてどうする?
オードリー・ルック3 スーツ・ルック
- デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
- ステンカラーのツイードのスカートスーツ。大理石色のスリーピース。ブラウスはアイボリークリープでノースリーブ。ジバンシィ1965SS
- 最初に登場した白手袋
- 大きめのサングラス
- サンドベージュ色のスエードパンプス。レネ・マンシーニ1965SS
- レザーバッグ。ジバンシィ。1965SS
今スニーカーが流行です。そして、ティーシャツが流行します。オフショルダーがトレンドです。などという言葉が散りばめられ、一ページ丸まるバルドーやオードリー、そして、ぬかりなく『ひなぎく』などのオシャレ系映画が散りばめられ、オシャレの感度が高まっているようでいながら、ただ、オシャレなものを羅列しているに過ぎない中身のない作業。今のほとんどのファッション雑誌の中身は、そんな表面的なオシャレ要素に満ち溢れています。
オードリーやバルドーがなぜいまだに人々の心を捉えて離さないのか?それは表現者としての役割を見事に果たしていたからであり、ただのマネキンではなかったからです。美女が、最新のファッションに身を包み、素晴らしい照明とフォトグラファーとセットによって生み出されるものは、結局はカタログ写真に過ぎず、ただただ、美の消耗品に過ぎません。今、ファッション誌をはじめとするファッションに関わるメディアの問題は、掘り下げずに、表面的な部分だけを広く捉えすぎている部分に存在するのです。ひとつのものを掘り下げずに表面的なものをたくさん手に入れたいと願う願望は、結果的にはファスト・ファッションにハマる人々の感性に見事に合致しており、彼らに必要なものは、ファッションを知るメディアではなく、表面的なファッションを真似するアイテムが羅列されたカタログなのです。
オードリー・ヘプバーンのスタイルはそのような姿勢とはまったく逆の姿勢により生み出されたものでした。まずそれを知ることから、ファッションと向き合うことが、私たちがファッション感度を高めるスタートラインなのです。オードリーがなぜ永遠のファッション・アイコンなのか?それは常に私たちにファッションの奥深さを伝えてくれる存在だからなのです。
オードリーの最大の魅力は・・・
オードリーの最大の魅力は、年齢ごとに全く違う一面を私たちに見せてくれていることです。私たちは、必ず年を取ります。アンチ・エイジングという言葉をヒトラーの演説のように声高に叫ぼうとも、エイジングは永遠に不滅なのです。そんな薄っぺらな言葉とは違う次元に存在する女性が、かつて世界中にはたくさんいました。
その一人が、オードリー・ヘプバーンなのです。彼女は、1953年の『ローマの休日』のアン王女から、年を重ねるに合わせて色々なスタイルを見せてくれました。極力プライベートを見せずに、映画作品の中で、ファッション・スタイルを示したからこそ、オードリー・スタイルは、永遠の輝きを保つことが出来たのです。ある女優の日々のファッション写真が、氾濫すると、彼女のスタイルは、やがてただの消耗品に過ぎなくなるのです。そういう意味においては、オードリーは結果的にアンチ・エイジングを実現した人だったのです。