ジャイプール
原名:Jaïpur
種類:オード・トワレ
ブランド:ブシュロン
調香師:ソフィア・グロスマン、ジャン=ピエール・マリー
発表年:1994年
対象性別:女性
価格:50ml/8,000円
愛を封じ込めるサファイアの香り
ハイジュエリー・ブランドであり、グランサンクのひとつであるブシュロンが1994年に発表した「ジャイプール」は、ソフィア・グロスマンとジャン=ピエール・マリーにより調香されました。
何よりも特徴的なそのボトルデザインは、ブランドイメージに忠実なラグジュアリー感に包まれています。それはインドのラージャスターン州(州都の名がジャイプル)の伝統的な花嫁のためのお守りのノーラタン・ブレスレットをモチーフにしたデザインです。
ルイ・ブシュロン(1874-1959)がインドのマハラジャのためにデザインした特注品をモチーフにしたボトルは、トップにはカボションカットが施されたサファイアブルーのイミテーションジュエリーが配置されています。
ボトルの概観からして、21世紀に存在してはいけないような存在感を放っています。
その表情からは情熱を感じさせない『宝石婦人』の香り
この香りは、酸いも甘いも知らない貴婦人のような香りです。これだけロマンティックな香料を使用しておきながら、心躍らせる匂いを何一つ生み出すことのない不思議な香りです。それはまるで、その表情からは情熱を微塵も感じさせない『宝石婦人』のようです。
そんな『宝石婦人』の香りは、アプリコットを中心とした、熟れに熟れたピーチとプラム、パイナップルの甘酸っぱいフルーツカクテルに、澄んだパウダリー感のあるフリージアが、その背景に静かに漂うようにしてはじまります。
すぐにフリージアに導かれるように現れる、パウダリーな甘いヴァイオレットローズが、フルーツのために魅惑のエレガンスの扉を開いてくれます。
扉を開くと、そこにはソーピィーなピオニー、ジャスミン、イリスルートと、フレッシュでウォータリーグリーンなピオニーとスズランが巧みにブレンドされた、個々の花々の香りを感じさせないミステリアスなシプレの芳香を感じることになります。
そこに、カーネーションやシナモン、カルダモンといったスパイスが、深い精神性と気品を感じさせるように宝石の輝きのような妖しい光を放っています。
徹頭徹尾、エレガントな香りです。生まれも育ちも上流階級で、流行に興味のない女性から漂ってきそうです。やがてドライダウンにつれ、アンバーとバニラを中心にヘリオトロープ、ベンゾイン、サンダルウッドが織り成すオリエンタルな甘さで香り全体は包み込まれてゆきます。
甘かろうとも、辛かろうとも、笑顔を見せていようとも、たとえ「あなたを愛している」と言おうとも、その宝石のように美しい美貌がすべての前に押し出され、感情を感じさせないそんな貴婦人にこそ相応しい〝悪魔のようなあなた〟の香りです。
2011年にインターパルファムに香水のライセンスが販売される流れの中で廃盤となりました。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ジャイプール」を「アプリコット・タルト」と呼び、「ソフィア・グロスマンが手がける香水は、まずまずのものより逸品が多い。90年代の彼女の全盛期に作られた香水(→トレゾァ、イヴレス)はIFF社に莫大な富をもたらした。その額は他社の製品をかき集めても足りないようだ。」
「彼女の現代風フローラルは、どれもけた違いのフルーツ様で独特だ。熟して甘い。透きとおったシロップ漬けのフルーツを思い出す。フルーツ様のシプレの粉っぽいラクトンのノートでもなければ、現代のフルーツ様のフローラルから香る可愛くて酸っぱいベリーでもない。」
「堂々たるアプリコットとプラムの甘酸っぱいアコードに複雑なウッディローズ様のハートノートが重ねられている。美食家を魅了する「プワゾン」がいくらか入っているが、消化できない科学物質はいっさいない。贅沢に装飾された香りだが、それでいておいしそうなフランス産の黄色いプラムのタルトだ。普通はペーストリーの香りだが、ヴェルサイユ宮殿では庭園から香る。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:ジャイプール
原名:Jaïpur
種類:オード・トワレ
ブランド:ブシュロン
調香師:ソフィア・グロスマン、ジャン=ピエール・マリー
発表年:1994年
対象性別:女性
価格:50ml/8,000円
トップノート:ピーチ、プラム、アプリコット、パイナップル、フリージア
ミドルノート:ローズ、ピオニー、カーネーション、ジャスミン、オーキッド、オリスルート、ニセアカシア、スズラン
ラストノート:サンダルウッド、ヘリオトロープ、ベンゾイン、バニラ、アンバー、スティラックス、ムスク、ヴァージニア・シダー