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ルイ・ヴィトン

【ルイ ヴィトン】マティエール ノワール(ジャック・キャヴァリエ)

ルイ・ヴィトン
©LOUIS VUITTON
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マティエール ノワール

原名:Matière Noire
種類:オード・パルファム
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2016年
対象性別:女性
価格:100ml/45,100円
公式ホームページ:ルイ・ヴィトン

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「バック・トゥ・ブラック」の名で作られた香り

©LOUIS VUITTON

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「マティエール ノワール」では、フレグランスにおける闇とはどのようなものかを追求していきたいと思いました。そして、それを人生のダークサイドに結び付けたいと思いました。

しかし、暗黒を際立たせるためには、光が必要です。だから、ジャスミン、ブラックカラント、水仙を使ったのです。元々この香りのコードネームは「バック・トゥ・ブラック」でした。私はこの香りでパチョリの限界を超えようと決意しました。

ジャック・キャヴァリエ

2016年9月に、ルイ・ヴィトンが、70年ぶりにフレグランス=レ パルファン ルイ ヴィトン(一挙、7種類の香り)を発売しました。全ての香りを調香したのは、2012年にルイ・ヴィトンの専属調香師に就任したジャック・キャヴァリエです。

そのうちのひとつである「マティエール ノワール」は、フランス語で「黒い液体」の意味です。〝黒〟という色を愛する女性のための香りです。

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ボードレールの『悪の華』の一節から生まれた香り

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©LOUIS VUITTON

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この《ルイ・ヴィトンの黒》の香りは、キャヴァリエがボードレールの『悪の華』の〝夕べのしらべ〟の一節からインスパイアされ生み出された香りです。以下その一節を二つの名訳を比較する形で引用しておきます。

『夕べのしらべ』堀口大學訳

時の来て、花柄の上にわななきて、
いま、花々は香に匂ふ、焼香炉もさながらに。
音と香気と、夕ぐれの空気に溶けつ。
ああ、なやましの円舞曲(ワルツ)かな、ああ、ものうさの眩惑(めくるめき)!

『夕べの諧調(ハーモニー)』阿部良雄訳

今や時はおとずれて、おのおのの茎の上に震えつつ、
どの花も、香炉さながら、薫じ立ちのぼる。
もろもろの音も香りも、夕べの空中を廻(めぐ)る。
憂愁(メランコリア)の円舞曲(ワルツ)よ、けだるい眩暈(めまい)よ!

ちなみにこの詩からインスパイアされたのが、クロード・ドビュッシーのプレリュード(前奏曲)集 第1集より第4曲「音と薫りは夕べの大気にただよう」です。

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谷崎潤一郎の『鍵』のように〝未知の世界へと誘う、魔性の香り〟

©LOUIS VUITTON

京マチ子様主演の映画『鍵』(1959)

沈香(アガーウッド)は、ラオスからインド、インドネシア、バングラデシュ、アラビア半島を経て、東洋の香りを象徴する非常に貴重な木材です。水仙とブレンドすることで、特別に贅沢な香りが生まれます。水仙の強く、苦味に近いグリーンノートは、物憂げな沈香にエネルギーを与えます。

非常にウッディで、底なしで、ダークで、サフランのようにスパイシーで、レザーのようです。そして持続性があります。

私は、花のありのままの香りをはるかに超えた個性を持つ、どこか忘れられてしまった香り=シプレに敬意を表したかったのです…つまり、この香りは、ウードが香るモダンシプレなのです。

ジャック・キャヴァリエ

暗黒への招待状。谷崎潤一郎の『鍵』のように、妻に残されている、異性を惹きつける魅力を推し量る《官能のリトマス試験紙》として、または女性の中の眠れる本能を呼び覚ますという秘められたテーマで作られたこの香りは、疑いようもなく〝未知の世界へと誘う、魔性の香り〟です。

血と肉蜜が滴るような酸味の効いたブラックカラントと、純潔の血が流れ透き通るようなグラース産メイローズが、フレッシュなパチョリを介してアガーウッドと交わった瞬間、極上のワインが誕生します。まるで蜃気楼のようなウードを感じさせる、決して飲むことの出来ないこのワインは、全身の毛穴に吸い込まれながら、酔わせるように獣性を蘇らせてゆきます。

0.5%の天然ウードと、キャラメルのようなエチルマルトールが含まれています。

神聖なる(貞淑なる)インセンスの風に乗り、底のない黒の中の黒に吸い込まれていくような感覚に満たされる中、暗黒の中で最も妖しく美しい香りを放つ、二酸化炭素で抽出されたグラース産ジャスミン、干草のようにビターグリーンな水仙、朝露のようなシクラメンといった白い花々が開花してゆくのです。

そして、ウードは、素肌に最も近いスエードレザーのような、スモーキーでありながら柔らかな質感を香りに与えてゆくのです。もっとも美しいものが、もっとも汚らわしい行為に耽る世界へ導かれていくのです。

〝ルイ・ヴィトンの暗黒の旅〟は、身に纏えば纏うほど、すぐにその匂いを忘れてしまう不思議な香り。良質な香りには、忘却=ロストノートが含まれているという真実を示す絶好のフレグランスです。

それにしても、私は基本的に、芸能人の方がどの香りを愛用しているかといった事にまったく興味はないのですが、秋吉久美子様のこの表現には参りました。香水に対する接し方が本当にステキです。

この香りのジュースは、本来は〝黒〟でなければならないと思っていました。しかし、黒のジュースはなかなか安定しないのです。だからこの色になりました。

ジャック・キャヴァリエ

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香水データ

香水名:マティエール ノワール
原名:Matière Noire
種類:オード・パルファム
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2016年
対象性別:女性
価格:100ml/45,100円
公式ホームページ:ルイ・ヴィトン


トップノート:ブラックカラントシロップ、ウォーターノート
ミドルノート:シクラメン、水仙、グラース産ジャスミン、グラース産メイローズ
ラストノート:ラオス産アガーウッド、パチョリ、インセンス、ベンゾイン