タバ ブロン
原名:Tabac Blond
種類:パルファン
ブランド:キャロン
調香師:エルネスト・ダルトロフ
発表年:1919年
対象性別:女性
価格:不明

タバコとレザーの香水の歴史は、この香りからはじまった。

©Caron
キャロンの賢明な創業者エルネスト ダルトロフは、女性性というものに「柔らかくてふくよか」なだけではなく、 もっと広義のコンセプトをもっていた。何といっても、女性は胸だけでできているわけではないのだ。1919年当時のタバブロンは、衝撃的なほどモダンだった煙草を吸う女に捧げられた。風変わりなレザー調の鋭いシプレがすばらしい香りだった。
スモーキーでビターなレザー調の香りが、爽やかでグリーンなハーブ調のシプレの構成を支え、そこに適量のアンバーで甘さが加味され、好ましい香りを作り出していた。
『世界香水ガイドⅡ』タニア・サンチェス
狂騒の20年代に突入する前の10年の間に、欧米社会では、喫煙が、先端を行く女性達にとって、優雅さの極みであると考えられたのでした。それは第一次世界大戦(1914~1918)により、男性が兵士として軍隊に取られたため、女性が工場やオフィスで働くようになったことと、紙巻たばこが大戦後、普及したことによる影響でした。
キャロンの創業者であり調香師であるエルネスト・ダルトロフは、そんな女性のライフスタイルの変化を敏感に察知した、キャロンのミューズであるフェリシエ・ヴァンピールのアドバイスを受け、1919年に、バージニア産のタバコ葉からインスピレーションを得た香り「タバ ブロン」を発売しました。
パブリック・スペースで喫煙する女性のために生み出されたタバコとレザーの香りは、それまで女性の香水の主流だったフローラルブーケではない、とても画期的なフレグランスでした。
男をその気にさせるタバコの効果的な使い方教えます。



煙草を吸う女。寝転びまどろみながら煙草を吸うマレーネ・ディートリッヒ(彼女はこの香りを愛していた)、ボギーに煙草の火をつけてもらうローレン・バコール、暗闇の中スポットライトを浴びて煙草を吸うリタ・ヘイワース、その美脚で男の心をよろめかせ、ほくそ笑みながら煙草を吸い、地獄へと誘うバーバラ・スタンウィック。
20世紀のハリウッド黄金時代に最も似合う香水、それが〝黄金の艶やさを持つ煙草=タバ ブロン〟です。
素肌で吸う煙草の香りは、スモーキーなレザー(天然のバーチタールやスティラックスではなく、イソブチルキノリンによって作られた)と干し草のようなクマリン、そして甘く温かみのあるスパイシーなカーネーションのハーモニーからはじまります。さらにリンデン・ブロッサムが加えられ、フレッシュグリーンな苦みと蜂蜜の甘さがひねりが感じられます。
すぐにスモーキーなベチバーがタバコらしさを強化する中、花蜜のようなイランイランとコスメティックなアイリスがニトロムスクの風に乗り、フェミニンなタバコの雰囲気を広がらせてゆきます。どこか黄金色のマロングラッセを思わせる、魅了する円やかさも広がります。
やがてアンバーとバニラ、シダー、そして芳醇なオークモスとすべてをワインに変えていく淫靡たるパチョリが存在感を増し、素肌の上から匂い立つようではなく、素肌の周りに埃っぽくパウダリーに漂う、ダークでドライなオリエンタル・シプレの余韻に包まれるのです。
艶めかしい美脚を組み替え、挑発する美女が吸う煙草の香り

©Caron
オリジナルの「タバ ブロン」の素晴らしさを的確に表現する言葉として、マッチ棒で煙草に火をつけ、燻っていく瞬間が、永遠に続いていくような、独特なエレガンスがあります。
まるで、自分の魅力を知り尽くした女性が、女性の肉体的な武器を隠したり、露わにしたりして、他人を翻弄するように、その煙のようにたゆたうレザーとタバコの香りにより、他人の心をよろめかせ酔わせていく、とても危険な〝よろめき香水〟と言えます。
この香りには天然のタバコが一切使用されていません。所謂レザーアンバーの香りです。シャネルの「キュイール ド ルシー」「バンデット」「カボシャール」など後世のレザー・フレグランスに与えた影響は甚大でした。
ボトルとパッケージは、当時のリズラのタバコの包装からインスピレーションを受けたものです。『氷の微笑』のシャロン・ストーンが吸う煙草の香りは、この香りなのではないでしょうか。
香水データ
香水名:タバブロン
原名:Tabac Blond
種類:パルファン
ブランド:キャロン
調香師:エルネスト・ダルトロフ
発表年:1919年
対象性別:女性
価格:不明

トップノート:レザー、カーネーション、リンデン・ブロッサム
ミドルノート:アイリス、イランイラン、ベチバー
ラストノート:ムスク、バニラ、シダー、パチョリ
