H24 エルブ ヴィーヴ
原名:H24 Herbes Vives
種類:オード・パルファム
ブランド:エルメス
調香師:クリスティーヌ・ナジェル
発表年:2024年
対象性別:男性
価格:30ml/12,430円、50ml/15,070円、100ml/20,460円
公式ホームページ:エルメス

大自然ではなく、大都会の植物にフォーカスした雨上がりの香り

©Hermès

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雨上がりの自然の香りの変化は、いつも私を魅了し、驚かせてきました。香りのない雨が、どうしてこんなにも魅惑的な香りを生み出すことができるのか、という疑問が湧いてきます。
雨上がりの香りは、大地から漂う香りに圧倒されることがよくあります。自然界では、まるで雨粒が空気中に自然な香りを放っているかのように、腐植土や草、植物の香りが地面から立ち上ります。
街中では、雨上がりの路面の香りが、同じように私を魅了する様々な香りを放ちます。まだ雨に濡れている自然と街が、新たな香りを放ち、新たな色を帯びる、あの特別な瞬間です。
クリスティーヌ・ナジェル(以下、すべての引用は彼女のお言葉です)
エルメスのメンズ・フレグランスの歴史は大きく3つに分類されます。1970年の「エキパージュ」、1986年の「ベラミ」、そして、2006年の「テール ドゥ エルメス」です。
特に初代専属調香師ジャン=クロード・エレナによる「テール ドゥ エルメス」は、イソEスーパーを世界中に広めた香りとして、メンズ・フレグランスにウッディ革命を起こし、史上最高のベチバー/グレープフルーツ・フレグランスとして、現在に至るまで確固たる地位を確立しています。
これらはすべて制作当時とんでもなく大胆な香りでした。つまり、エルメスのメンズ・フレグランスの歴史は、革新の歴史だったのです。そして、2021年、再びその時がやって来たのでした。
2014年3月にエルメスに入社し、エレナの下で二年間の引継ぎ期間を経て、2016年1月に二代目専属調香師に就任したクリスティーヌ・ナジェルは、2021年2月28日にオリジナルのメンズ・フレグランスの新作「H24」を発表しました(パンデミック以降、エルメス本社9階に彼女のオフィス兼ラボはある)。
この香りは、メンズ・フレグランスの80~90%を占めるウッディからの解放であり、オリエンタル、ムスク、スパイス、フローラル、アンバーウッディではないボタニカルの香りでした。クリスティーヌは「テール ドゥ エルメス」のウッディでスパイシーな要素とは対照的な柔らかさ香りの中心に据えて、新しいエルメスの男性像を解釈したいと考えていました。
雨上がりのフレッシュハーブの香り

©Hermès

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「H24」の最初の2つの香りでは、スクラレンという成分を使って、香りにメタリックな温かみを加えました。今回はフィスクール®という新しい分子を使ってみました。ほんのりミントの香りですが、水に触れると清涼感をもたらします。
この「H24」の香りを、まず乾いた腕に、次に湿った腕にもつけてみてください。香りが湿気を帯び、より涼しく感じられるはずです。この物理的な感覚が好きです。ほんの少し異なるその感覚が、シンプルなハーブに鋭さを添えるのです。
「H」とはHERMÈS、HOUR(時間)、HOMME(男性)の頭文字であり、「24」は1880年以来エルメスが第1号店を構えるパリのフォーブル・サントノーレ店の番地、24を意味しています。さらに「H24」とは、フランス語で「24時間」を意味する一般的な表現です。
そして、2022年10月1日にオード・パルファム・ヴァージョンとなる「H24 オードパルファム」が発売され、2024年2月7日には「H24 エルブ ヴィーヴ」が発売されました。
クリスティーヌがボタニカル・フレグランスと呼ぶ「H24」シリーズの第三弾は、一年かけて開発されました。〝生き生きとしたハーブ〟と名付けられたこの香りは、雨上がりの街に息づく自然の様子を描き出した香りです。
フレッシュなハーブと素肌の上で融合するメタリックフゼア

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この香りは、約2年前に、雨が降り始めた時、家庭菜園を何度も散歩した経験から生まれました。そして雨が降った直後、一見何の変哲もないように見えるのに、芳醇な香りを放つ小さなハーブたちを際立たせたいという衝動に駆られたのです。
セイボリーやスイバ、パセリ、ヘンプといったハーブたちは、雨上がりに、水分をたっぷりと含み、強烈な香りを放ち、力強く爽やかな香りを放ちます。それらは驚くべきことに、すでに刈り取られたかのような印象を与えながら、極上のフレッシュさを漂わせるのです。
より強力で濃厚なフレッシュさを追求する中で、私は、柔らかさとジューシーさを強調する洋ナシのシャーベット、希少な天然由来の合成分子であるフィスクール®を配合しました。このミント系の分子は、水と触れると、フレッシュな香りと驚くほどの活力をもたらします。
爽やかな酸味が感じられるジューシーな洋ナシの爽快感からこの香りははじまります。そしてシンクロするようにしっとりとしたクラリセージ、セイボリー、ソレル、ヘンプ、パセリといったハーブミックスと新鮮な空気を思わせるペッパーが混ざり合った、グリーンの輝きが溶け込んでゆきます。苦みはほとんどありません。
すぐにフィスクール®(Physcool®)という従来のメントールやミントのような後味がなく、清涼感を長時間持続させることが出来るフレーバー(天然由来の清涼化剤)の香りが、水仙と共に広がってゆきます。
大自然の中の雨上がりではなく、大都会のアスファルト・ジャングルの中での雨上がりを連想させる、洋ナシのグラニテ(シャーベット)とフレッシュグリーンな香りが、冷たい人工都市の香り(フィスクール)とひとまとめになり、ひりひりした独特な感覚と共に素肌の上でとろけて匂い立ちます。
最初から最後まで弾けるような洋ナシのフルーティーさが感じられます。ですが、あくまでも穏やかに静かに感じられるのがポイントです。
雨水がコンクリートを透かして大地に染み込んでいくように、大都会に眠るグリーンが雨上がりに目覚めていくようなフレッシュグリーンな解放感とどこか未来都市のような近未来的な洗練されたメタリックの香りが、メタリックグリーン、またはコンクリートグリーンという言葉で表現したくなる独特な香り立ちで素肌を満たしてゆきます。
とても清潔感があり、穏やかで、そして静かに自信に満ちているフルーティーなハーブとグリーンが、五感をクールダウンさせながらも心と魂を温めるていく力強さに包まれたメタリックフゼアの香りです。
見えざる手によりボトルが握り締められているような〟フィリップ・ムケによるボトルは、香りに合わせてグリーンのラッカーが施されています。深みのあるグリ・ヴェールのケースは、植物のエッセンスが染み込んだ都市のアスファルトを思わせます。
一応男性用ではありますが、私は女性がつけても大丈夫だと思います。香りが性別を決めるわけではありません。男性の肌には男性的な香りが、女性の肌には女性的な香りが漂うのですから。私たちはただ、大胆に、自分の直感を信じて、色々なことを試してみる必要があるのです。
香水データ
香水名:H24 エルブ ヴィーヴ
原名:H24 Herbes Vives
種類:オード・パルファム
ブランド:エルメス
調香師:クリスティーヌ・ナジェル
発表年:2024年
対象性別:男性
価格:30ml/12,430円、50ml/15,070円、100ml/20,460円
公式ホームページ:エルメス

シングルノート:ハーブ、洋ナシ、フィスクール®

