究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ
アニック・グタール

【グタール】プチシェリー オードパルファム(アニック・グタール/イザベル・ドワイヤン)

アニック・グタール
©Goutal Paris
この記事は約6分で読めます。

プチシェリー オードパルファム

原名:Petite Cherie Eau de Parfum
種類:オード・パルファム
ブランド:グタール
調香師:アニック・グタール、イザベル・ドワイヤン
発表年:1998年
対象性別:女性
価格:30ml/16,940円、50ml/23,760円、100ml/33,330
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム

スポンサーリンク

死を予感した母が、愛する娘のために遺した香り

アニック・グタールとカミーユ。

アニック・グタールとカミーユ。

©Goutal Paris

私たちは、感情を香りで表現することに重きを置いています。だからこそ、母親が娘のために「プチシェリー」を購入している姿を見ると嬉しくてたまらないのです。

それは、この香水を作ったときに母が私にしたことと同じ『娘への永遠の愛の宣言』なのですから。

カミーユ・グタール

アニック・グタール(1946-1999)によって、1981年に『アニック・グタール』は創業されました。そして、すぐにアニックは二人の娘のための香りを作りました。一つは1980年に再婚した夫の連れ子シャルロット(カミーユより4歳年上)のために1982年に作った「オー ド シャルロット」でした。

そして、もうひとつは、自身の元夫との間の娘カミーユ(1975-)のために、彼女のリクエストに応えて1983年に作った〝家庭菜園のような香り〟「オードカミーユ」でした。

30才のとき(1977年)、乳癌になったアニックは、回復するも、1988年に乳癌を再発し、以後12年間癌と戦うことになるのでした。そんな中、1998年に23歳になったカミーユが最初の子(娘)を出産したのでした。

1997年に話は遡ります。日々体調の悪化を感じていたアニックは、もう自分にはあまり多くの時間が残されていないことを感じていました。そして、彼女はカミーユの中で生きてくれるような香りを作りたいと心の底から願うようになりました。

かくして1998年に生み出された「プチシェリー」(=愛しの我が娘の意味であり、母がカミーユを呼ぶときの愛称)は、20代の娘カミーユと生まれたばかりの孫娘マイラのために全身全霊を捧げ、盟友イザベル・ドワイヤンと共に創り上げた香りでした。

一般的には、当時20歳のカミーユのために作られた香りというストーリーが流布しており、それは正確ではありませんが、この香りの精神を的確に伝えています。つまりこの香りは、大人の女性へと成長しつつある娘を祝福する〝母の愛〟の香りなのです。

7歳のとき母に「オードカミーユ」を作ってもらったのは、「なぜシャルロットだけなの?」と母にゴネたからなのです。母は「あなたはまだ若すぎるから必要ないと思ったのよ」と言いいながら、私の好みを聞いて作ってくれました。

しかし、「プチシェリー」は、面白いことに私に何一つ聞かずに、当時の20代前半の私のイメージを膨らませて作ってくれた香りなのです。20歳の頃は、とにかく楽しみたい、若いから何もしなくても可愛い…だからとても爽やかで、楽しくて幸せな香りなのです。

カミーユ・グタール

スポンサーリンク

オードトワレとオードパルファムの比較

©Goutal Paris

©Goutal Paris

©Goutal Paris

老婦人が木に登ることを禁じるものは何もありません。

アストリッド・リンドグレーン

「プチシェリー」のオードトワレの印象は、みずみずしく透明感のある若々しさです。一方、オードパルファムは、この香りが作られたイメージ(=娘カミーユの幼い頃の頬の丸みや、小さな子の頬にふんわりとある産毛)して、思わず食べてしまいたくなるような愛らしさを香りで表現しています。

つまり、トワレより〝柔らかさ〟〝ソフト〟〝丸み〟がより感情を揺さぶるように立体的です。

フルーツを主体とした香水に、通常天然香料はメインで使用されないのですが、この香りの稀有なところは、天然香料により、洋ナシとピーチを表現しているところにあります。

だからこそ寿命は短く、その弱点を克服するために生み出されたのが、このオードパルファムです。

シャンパンのように弾けるフルーティーな洋ナシとピーチがスパークリングするようにはじまる訳ではなく、冷やした洋ナシとピーチが徐々に温かくなり、熟していくようなフルーティーさからはじまります。この熟したフルーツの中で涼しげにほのかに香るカットグラスが、フルーツに潜む獣を感じさせます。

だんだんと白ワインのように滑らかな芳醇さの上にパウダリーローズが乗っかかり、そこにバニラが柔らかなヴェールで覆っていくようにして、どこか真珠を連想させるなめらかな光沢に包まれていくのです。

少女が貴婦人のように成熟していくようでありながら、貴婦人が少女のようなみずみずしさを示す、さらには、クールビューティーな貴婦人が愛する人の前でだけ見せる淫獣のような、相反する女性らしさが、洋梨とピーチを通して、肌の上に円やかに広がってゆきます。

それにしても、優しく儚げで、透き通るような香りを女性が身に纏うと、自然にすべての所作が、大仰ではない、洗練された美しさを引き出していくことは、香りが持つ魔法のひとつだと言えます。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:プチシェリー オードパルファム
原名:Petite Cherie Eau de Parfum
種類:オード・パルファム
ブランド:グタール
調香師:アニック・グタール、イザベル・ドワイヤン
発表年:1998年
対象性別:女性
価格:30ml/16,940円、50ml/23,760円、100ml/33,330
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム



トップノート:洋梨、グラス(草)、ピーチ
ミドルノート:ローズ、ヘディオン、ライラック
ラストノート:バニラ、ホワイトムスク