ウール エクスキーズ
原名:Heure Exquise
種類:オード・パルファム
ブランド:グタール
調香師:アニック・グタール、アンリ・ソルサナ
発表年:1984年
対象性別:女性
価格:日本未発売
ヴェルレーヌの詩に香りをつけてみたら…
1981年に創業したアニック・グタールから1984年に発売された「ウール エクスキーズ」は、〝このうえなき時間〟という意味を持つ香りです。グリーンフローラルの香りは、アニック・グタールとアンリ・ソルサナにより調香されました。
ゲランの「ルール ブルー」と同じくらいの時間帯を意味する、昼から夜に変わる瞬間。または大地を照らす光が太陽から月に変わる、そんな夜空がまだ星を見つけていない瞬間を描き出した香りです。
この香りは、ポール・ヴェルレーヌの詩『La Lune Blanche』の中の最後の一行に書かれた「C’est l’heure exquise!」から名付けられた可能性が極めて高いと言えます。
その理由として、元ピアニストのアニックは、ガブリエル・フォーレをとても愛しており、この詩はフォーレが1891年から92年にかけて発表したヴェルレーヌの詩による歌曲集『優しい歌』Op.61(La bonne chanson)の第3曲目の「白い月影は森に照り(La lune blanche luit dans les bois)」で取り上げられていたからです。
永井荷風の翻訳したこの詩の最後の一行は「あゝ、うつくしの夜や。」と訳されています。
胸が張り裂けそうなほど美しいグリーンフローラルの香り
真っ白の満月が森を照らすように、真っ白のフィレンツェ産アイリスがあなたの肌を照らすようにしてこの香りははじまります。そして、月に照らされた葉が囁きあうように、肌の上に苦いガルバナムが静かに香りを放ってゆきます。
粉雪のようなパウダリックかつアーシィーなアイリスに、スモーキーなガルバナムが注ぎ込まれていく中、月の光は、底なき鏡のような湖に反射し、立ち並ぶ白檀を眠りから覚ましてゆきます。スパイシーかつクリーミーなその吐息に包まれながら、その下に甘く咲き誇るトルコ産ローズも花を咲かせます。
ガルバナムからヒヤシンスに移り変わってゆくグリーンの煌めきに胸が張り裂けそうなほどうっとりする中、まるで、やさしくも、果て知られぬしづけさに包まれていくように、バニラとクマリン、そして、シベットがそよ風のように吹きかかります。そして、どこまでも肌に近いローズとサンダルウッドに抱擁されるように、すべてがクリーミーグリーンに優しく掻き混ぜられ、至純至高の余韻で包み込んでくれるのです。
シャネルの「No.19」(ガルバナムとアイリス)やエルメスの「イリス」と強い親和性を感じさせる香りです。ちなみに2000年代のはじめまでは本物のマイソール産のサンダルウッドが使われていました。
タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「ウール エクスキーズ」を「アニマリックアイリス」と評し、「グタールのスタイルである洗練された謙虚さを匂わせるクラシックなフローラルは、整い過ぎてあまりに上品というのが欠点。ほれぼれするもののなかなか好きにはなれない。体にフィットしたオーダーメイドの服みたいで、見た目はきれいだけど歩きにくい。」
「ウール エクスキーズは私が純粋に大好きなグタールのフレグランス。リッチなガルバナムとアイリスの構成。シャネル「No.19」に近いけれど、シャネルの神経質な感じとは対照的。ウッディとアニマリックの香調が作るおおらかで温かく、羽毛ぶとんに倒れこんだ気分」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:ウール エクスキーズ
原名:Heure Exquise
種類:オード・パルファム
ブランド:グタール
調香師:アニック・グタール、アンリ・ソルサナ
発表年:1984年
対象性別:女性
価格:日本未発売
シングルノート:アイリス、ガルバナム、ヒヤシンス、ローズ、サンダルウッド、バニラ