【天使の涙】
Fallen Angels 中国返還前夜の香港。思い返せばこの時代の香港が最も輝いていたのかもしれない。そんな香港に降り立った6人の天使達が生み出した歴史的なポップアート映画。
ウォン・カーウァイ×クリストファー・ドイル(超ワイドレンズ)が最も魅力的だった時代の作品。そして、金城武の圧倒的なアイドル性と、レオン・ライのクールネス、カレン・モクの90年代アジア・コギャルの典型といったそれぞれ個性的な登場人物。
しかし、何よりもこの作品を永遠のファッション・ムービーに変えたのは、ミッシェル・リーというこの作品のために生まれてきたような絶世の美女の存在感につきるのです。
あらすじ
足を洗うタイミングを考えている殺し屋(レオン・ライ)と女エージェント(ミシェル・リー)はパートナーを組んで仕事をしている。しかし、155週目にしてはじめて一緒に座って話をしてしまい、仕事に私情を持ち込まないクールな関係が崩れてしまうのだった。
女エージェントが住む重慶マンションの管理人の息子モウ(金城武)は、5歳の時、期限切れのパイン缶を食べすぎて以来、口がきけなくなった。ある日、彼は失恋したばかりの女の子(チャーリー・ヤン)に出会い、初めて恋をした。
一方、殺し屋は、金髪の女(カレン・モク)とマクドナルドで出会い、行きずりの関係を結ぶ。
その日、地下鉄の構内で金髪の女と女エージェントはすれ違う。その時、女エージェントが殺し屋と同じ香水をつけていることを金髪の女は気づき、女エージェントは、金髪の女から殺し屋の香水の残り香を嗅ぎつけ、はっとして二人はお互いに振り返る。
この瞬間、天使の涙は、4人の若者の頬に伝って落ちていくのだった・・・
ファッション・シーンに与えた影響
『天使の涙』がファッション・シーンに与えた影響は実に大きい。ミウッチャ・プラダがこの作品の金城武をとても気に入ったことからも分かるように、90年代のファッション・デザイナーはこの作品の世界観に夢中になりました。以下、ファッション・シーンに大きく影響を与えた三点を挙げてみましょう。
- 21世紀初頭に大流行するプチプラ・モードの先駆け
- カレン・モクの渋谷系コギャル・スタイル
- クリストファー・ドイルの超ワイドレンズ撮影
レンズによって歪むミッシェル・リーは、ほとんど芝居らしい芝居をしていない。芝居は、クリストファー・ドイルのレンズに委ねられているのです。そうなのです。この作品の面白いところは、美人を出来るだけ醜く撮ろうとしている所にあるのです。
だから、ミッシェル・リーはとんでもなく魅力的なのです。そういう意味において、この作品は、美女を魅力的にとる「ブサ撮り」の先駆けとも言えます。
それにしても、この役、今なら沢尻エリカにぴったりだろう。
作品データ
作品名:天使の涙 Fallen Angels 堕落天使 (1995)
監督:ウォン・カーウァイ
衣装:ウィリアム・チャン
出演者:ミッシェル・リー/カレン・モク/チャーリー・ヤン/レオン・ライ/金城武