オー デュ フィエール
原名:Eau du Fier
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:イザベル・ドワイヤン
発表年:2000年
対象性別:男性
価格:不明
アニック・グタールが夫に捧げた未完の作品
1999年に長年の闘病生活の末、遺作「ス ソワール ウ ジャメ」を発表した直後死去したアニック・グタール(1946-1999)には、夫アラン・ムニエ(有名なチェリスト)に捧げようと、志半ばで未完となっていた香りが存在していました。
その香りの名を「オー デュ フィエール」(=誇り高き水)と申します。火炎放射器から解き放たれたようなウッディ・スモーキーなこの香りは、2000年に盟友のイザベル・ドワイヤンに継承され、完成されました。
しかし、僅か7年間だけ発売され、消えてしまった幻の香りです。そのあまりにも短い販売期間ゆえに、本当に発売されていたのかどうかもなぞの存在だったこの香りは、個々で香ると〝醜い〟匂いに生命力を与えるというニュアンスで生み出された香りでした。
アニック・グタール幻の問題作
バーチタールとブラックティーとオスマンサスというとんでもない組み合わせで生み出されたこのメンズ・フレグランスは、太陽が燃えるようなバーチタールのうねりの中に投入されるビターオレンジの鮮やかな咆哮からはじまります。
レザーの皮で包まれたオレンジがガソリンを注がれていくような強烈な匂いがします。
すぐに焦土化しそうな香りの中から閃光のように、シャープなベルガモットとミントが、ひとつの香りの中にふたつの側面を巧みに同居させてゆくのです。
スモーキーなラプサンスーチョンとクローブが、燃える太陽をなだめるように注ぎ込まれ、黒いススと滑らかな質感を生み出してゆきます。そして、オスマンサスがレザーの側面とアプリコットの側面を優雅に照らし出してゆきます。
最終的に、焦げたタイヤ、ガソリン、燃えるプラスチック、スモークティーのすべての要素が肌の上で柔らかく展開していくのです。あなたの動力がガソリンになり、機械仕掛けのマリオネットになってしまうような〝苦みばしったいい男〟と化すのです。
どこか1998年に発売された革命的な香りであるブルガリの「ブラック」を連想させる香りです。
タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「オー デュ フィエール」を「レザリーティー」と呼び、「フィエールというのはうぬぼれた目立ちたがり屋の男のこと。革と葉と柑橘類が組み合わされたこの香りをまとうにはぴったりのタイプ。まさに新車の匂いだから。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:オー デュ フィエール
原名:Eau du Fier
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:イザベル・ドワイヤン
発表年:2000年
対象性別:男性
価格:不明
トップノート:ビターオレンジ、ミント
ミドルノート:ティー、ソルト、オスマンサス、クローブ
ラストノート:バーチ