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ゲラン

【ゲラン】シャマード オーデトワレ(ジャン=ポール・ゲラン)

ゲラン
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シャマード オーデトワレ

原名:Chamade Eau de Toilette
種類:オード・トワレ
ブランド:ゲラン
調香師:ジャン=ポール・ゲラン
発表年:1969年
対象性別:女性
価格:75ml/17,600円
公式ホームページ:ゲラン

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カトリーヌ・ドヌーヴの香り

1971年 ©GUERLAIN

『別離(ラ・シャマード)』のカトリーヌ・ドヌーヴ

あなたは真っ暗闇の中で彼女の何を感じることが出来るだろうか?その美しい肉体も、メイクアップされた魅惑の表情、目も、髪も、宝石も見ることが出来ない。ただ感じ取れるのは、チャーミングな声と香りだけだ。

ジャン=ポール・ゲラン

フランソワーズ・サガンが、1965年に発表した『熱い恋』(原題:ラ・シャマード」は、1968年に、カトリーヌ・ドヌーヴ主演により映画化されました(日本では『別離』という名で公開された)。

このサガンの小説とドヌーヴの映画からイメージを膨らませ、ゲランの四代目調香師ジャン=ポール・ゲランにより、1969年に生み出されたのが「シャマード」でした。そして、同時期に「オーデ・トワレ」も発売されました。

シャマードとは、ナポレオン時代において、軍隊の退却を示す太鼓を叩く音(=降伏の合図)という意味です。それは、新たなる愛を確信し、高まる心臓の鼓動の意味でもあります。

つまり「シャマード」とは、その愛に降伏した瞬間に一変する世界を表した香りなのです。

フレグランス史上はじめてブラックカラントバッド(カシス)が使用された香りです(ヒヤシンスがブラックカラントに恋に落ち、完全降伏する香りとも言えます)。

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クリティカル・イレブンミニッツの香り

『別離(ラ・シャマード)』のカトリーヌ・ドヌーヴ、衣装はもちろんイヴ・サンローラン。

『別離(ラ・シャマード)』のカトリーヌ・ドヌーヴ。原作を読んでいるオフショット。

オードトワレの香りのイメージを簡単に説明すると、それはプルーストの「失われた時を求めて」を一冊にまとめた角田光代版「失われた時を求めて 全一冊」を読むような感覚です。あの長編を読みきった人には、物足りなく感じるのですが、途中で挫折した人にはとんでもなくありがたい代物です。

ただし、一冊にまとめられたとはいえ長編であることに変わりなく、恐ろしく重厚です。この香りの流れも同じく、決してオード・トワレだからと言ってわかりやすいものではありません。

この香りの別名を「クリティカル・イレブンミニッツの香り」と呼びましょう。飛行機事故が最も多発する、離陸後3分と着陸前8分のように、この香りがあなたに衝撃を与えるのはこの11分間なのです。

まず最初に、炸裂するガルバナムの香りに導かれ、爽やかなヒヤシンスが絡み合うグリーンノートからこの香りははじまります。

すぐにアルデハイドとヘディオンに導かれ、多彩な陰影を織りなすジャスミン、ローズ、スズラン、ライラック、イランイランの香りがパウダリーさを伴いながら〝春の花の到来〟を告げます。ここまで僅か3分の出来事です。そして、この3分間でこの香りに衝撃を受けてしまう可能性があります。

やがて、(トロピカルフルーツと硫黄が付け合わされた)甘酸っぱいブラック・カラントが溶け込んでいき、シャリマーの銅鑼の音(=ゲルリナーデ)が響き渡ります。さらに、香りを至福な物に変えるべく、バニラとサンダルウッド、ベンゾイン、トンカビーン、ベチバーがパウダリーな甘さで香り全体を包み込んでくれるのです。

このドライダウンのはじまりの8分間をなんとしても耐え切りましょう。でないと着陸後、あなたは身も心もこの香りの虜になってしまう恐れがあります。かなり中毒性の高い香りです。

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香水データ

香水名:シャマード オーデトワレ
原名:Chamade Eau de Toilette
種類:オード・トワレ
ブランド:ゲラン
調香師:ジャン=ポール・ゲラン
発表年:1969年
対象性別:女性
価格:75ml/17,500円
公式ホームページ:ゲラン


トップノート:アルデハイド、ヒヤシンス、ベルガモット、ガルバナム
ミドルノート:ライラック、ジャスミン、ジャスミン、クローブ、スズラン、ターキッシュローズ、イランイラン、ブラックカラント
ラストノート:トルーバルサム、ペルーバルサム、サンダルウッド、アンバー、ベンゾイン、バニラ、ベチバー