20世紀のセックス・シンボルの誕生。
ジュリエット・ルック2 レッドドレス
- デザイン:ピエール・バルマン
- 赤のシースドレス、ボートネック、膝下丈タイト
- ベージュのアンクルストラップサンダル
ブリジットの大きな長所の一つは、スノッブでないことだった。私たちは多くの有名人に会う機会があったが、「名声」や財産にブリジットが心を動かされることは決してなかった。
ロジェ・ヴァディム
私は、人生において、いつもシンプルさを追い求めてきた。スノッブたちや社交界の人々とのあの耐え難いつきあいよりも、シンプルな人々と一緒にいるほうを好んできた。
私を喜ばそうと、撮影や旅行の間、私に押し付けられるあの冷たく、不必要で、大仰な豪華さよりも、心のこもった、きれいな生活環境のほうを好んできた。自然と私との間の距離が広がれば広がるほど、私は居心地が悪くなる。だから私は、都市や、ビルディングや、コンクリート、高い天井や、何階もある家、大きな部屋や、エレベーター、ネオン、プラスチック、それに電気製品が嫌いなのだ。
ブリジット・バルドー
ずっと憧れの男性だったアントワーヌが、タイトなドレスに身を包む自分に対して、男友達に言う一言をジュリエットはふと耳に入れてしまいショックを受けます。「あの手の女とは一晩寝たらおさらばさ」の一言でした。初めてのキスを交わした後の一言であり、彼女は絶望にも似た脱力感に浸ります。
そんな屈辱を与えられて、決して許さず、アントワーヌに名前を呼ばれても決して振り返りません。このレッドドレスの美しさは、クールさを装うジュリエットの内面を表すかのような所にあるのです。アップスタイルにしたブロンド美女が赤いドレスを着て、白いオープンカーの助手席に乗って去っていくのではなく、青い自転車を引いて去っていく姿に、この作品の非凡さと、女優の本質を映像に反映させるロジェ・ヴァディムという男の凄みが見えてくるのです。
その時のジュリエットの姿は、ヴァディムの言葉を借りると、「肉体の欲望に負けたくはないが、自分がいずれ屈服してしまうことはわかっている」女の後姿なのです。
イザベル・コーレイ・スタイルその2
リュシエンヌ・ルック2
- ピンクのVネック・カクテルドレス、かわいいフレアスカート
ブロンドのミディアムヘアに健康的な小麦肌。そして、ピンクのデコルテが剥き出しのカクテルドレスの可愛らしさ。どちらかというと骨格のしっかりした健康美溢れる女性が着ると、素晴らしくマッチするそのシルエットが、まだ10代半ばのイザベル・コーレイの張りのある健康美をそつなく引き出しています。
ブリジット・バルドーのレインコート
ジュリエット・ルック3 レインコート
- グレーのステンカラーコート
- 黒のハイヒールパンプス
衣服を脱ぐことはブリジットは気にしなかった。しかし自分の魂を裸にすること、自分の内面をさらけ出すことはこわがった。各シーンの撮影前に私はブリジットの髪をくずし、カットの合間に化粧を直すことを禁じた。
ロジェ・ヴァディム
本作の撮影が進んだ一週間目に、フィルムのラッシュをバルドーが見たとき、彼女は自分が「ブス」で、髪がくちゃくちゃで、化粧もちゃんとしていないと泣きました。それは、バルドーから自然な雰囲気を引き出したかったヴァディムが、同じシーンを二度以上繰り返させることはなかったからでした。そして、その演出の結果、バルドーとジュリエットは同化され、役柄に魂が吹き込まれたのでした。