ユベール・ド・ジバンシィの仮縫いに10時間費やしたオードリー
オードリーは、映画の中の衣装を選ぶ時も、プライベートで服を選ぶ時も、一日の大半を費やしたと言われています。それは普通の女優なら1時間くらいで終わらせる衣装の仮縫いにも、10時間くらいかけるほど、問題の箇所を直しては再びフィッティングして確認し、何度か繰り返し、徹底的に完璧な「シンプルさ」を求めたのでした。
「シンプル」という言葉の持つ意味の奥深さを知ることから、芸術的感性の磨きがはじまるとするのなら、オードリーは20代にして早くも「シンプル」の奥に潜む輝きを探し出そうとしていたのでした。
そんなしっかりとした信念と共に、デザイナーであるユベール・ド・ジバンシィと意見交換し合えたからこそ、映画女優とファッション・デザイナーの長年の友情は保たれ、ファッションの歴史に大いなる影響を与えるに至ったのでしょう。
ジョー・ストックトンのファッション8
オペラ座ルック
- デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
- エメラルドグリーンのシルクのイブニングケープ。フード付き。ジバンシィ1956SS
- ホワイトイブニングドレス
- 白のグローブ
- 白のキトンヒール・パンプス
- グリーンのシニヨンキャップ
- ホワイトクラッチ
ジョー・ストックトンのファッション9
ホワイトパンツ・ルック
- デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
- 白のクロップドトップ、ボートネック
- 白のハイウエストテーパードパンツ
- ウエストに太いピンクリボン
- かなり高いヘッドのストローハットに2段リボン
- ピンクのバレエシューズ
ジョー・ストックトンのファッション10
ローブデコルテふたたび
- デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
- ピンクローズのフローラル刺繍入りのオフショルダーのグレーのローブデコルテドレス。フレアスカート、スプリットスリーブ、プリーツスカート
- グレーのローヒールパンプス
美は生命の躍動する瞬間に生まれるもの
ルーブル美術館の階段を下りる。サモトラケのニケの彫像の後ろから現れるオードリー。勝利の女神を前に、両手を広げて掲げるオードリーは、動き出した彫像のようです。
「驚いた!最高にきれいだ!待て、とまれ、とまれ!」と叫ぶシャッターチャンスを逃さないように焦るフレッド・アステアに対して、「早く撮りなさいよ。止まるのはいやよ。早く写真を!」と歓喜の声をあげるオードリー。
この世で最も美しいものは動いている瞬間=生命の躍動感にあるとでも言わんばかりのスタイルを示す象徴的なシーンです。この瞬間、彼女は、ファッション業界の永遠の女神となったのでした。
この写真は、本作が撮影されていた1956年に撮影されたリチャード・アヴェドンによる、スージー・パーカー(本作のタイトルとピンクシーンにも出演)をモデルにした有名なファッション・フォトです。
ローラースケートを履いて躍動する二人(ルイ16世やマリー・アントワネットが処刑されたコンコルド広場で、ディオールを着て撮影された)。そうです、「とまらない」写真を撮るフォトグラファー・リチャード・アヴェドンのスタイルを映像化したシーンが先ほどの『パリの恋人』のハイライトシーンなのです。
そして、リチャード・アヴェドンと言えば1973年のJUN ROPE’のCMです。
ジョー・ストックトンのファッション11
レッド・イブニングドレス
- デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
- スリット入り赤のシフォンのストラップレスドレス
- レッド・シフォンのストール
- 白のロンググローブ
- 赤のローヒールパンプス
- ブルーダイヤのビジューネックレス
作品データ
作品名:パリの恋人 Funny Face (1957)
監督:スタンリー・ドーネン
衣装:ユベール・ド・ジバンシィ/イーディス・ヘッド
出演者:オードリー・ヘプバーン/フレッド・アステア/ケイ・トンプソン/ドヴィマ
- 【パリの恋人】オードリー・ヘプバーンの究極のファッション・ムービー
- 『パリの恋人』Vol.1|オープニング・タイトルとリチャード・アヴェドン
- 『パリの恋人』Vol.2|オードリー・ヘプバーンとブックストアガールルック
- 『パリの恋人』Vol.3|オードリー・ヘプバーンとエルメス
- 『パリの恋人』Vol.4|オードリー・ヘプバーンとリトルブラックドレス
- 『パリの恋人』Vol.5|赤いイブニングドレスのオードリー
- 『パリの恋人』Vol.6|オードリー・ヘプバーンとウエディングドレス
- 『パリの恋人』Vol.7|オードリー・ヘプバーンとリトルホワイトドレス
- 『パリの恋人』Vol.8|ドヴィマ 伝説のファッション・モデル
- 『パリの恋人』Vol.9|フレッド・アステアのエレガンス
- 『パリの恋人』Vol.10|フレッド・アステアのエレガンスPART2