クラレンスのM65が、モードミリタリーを生み出した。
この作品の撮影がはじまる初日に、監督のトニー・スコットは、クリチャン・スレーター(1969-)が、クラレンス像を掴みきれていないと感じました。そして、彼に、『タクシー・ドライバー』(1976)のビデオテープを渡したのでした。
クラレンスは、ロバート・デ・ニーロが演じたトラヴィスと同じくM65フィールドジャケットを着ているのですが、彼のM65には沢山のワッペンが付いています。この作品における、クラレンスのスタイリングの最も素晴らしい例として、このジャケットを挙げるべきでしょう。それは、若者の特権としてのミリタリー・スタイルの楽しみ方の提案なのです。
20代の季節にだけ許される、ミリタリーにカワイさを投入するゆとりっぷりが、大人の男子のミリタリーとの無骨な向き合い方に対するアンチテーゼになっています。
このM65の登場により、多くのラグジュアリー・ブランドのファッション・デザイナーは、ミリタリー・テイストに、遊び心を付け加えていく勇気を与えてもらうことになりました。まさにモードミリタリーはここから始まったのでした。
クラレンス・ルック3
ミリタリールック
- M65フィールド・ジャケット
- ブルーのフーディパーカー
- グレーの格子柄のフランネルシャツ
- 黒のカットソー
- チャコールグレーのデニムジーンズ
- シルバーのエルヴィスサングラス
クラレンス・ルック4
レザージャケット
- ブラック・レザージャケット、シングル
- ネオンオレンジ色のフーディパーカー
- パープルの格子柄のフランネルシャツ
- 黒のカットソー
- ウォッシュドデニムパンツ
- ブラックブーツ
クリスチャン・スレーターは、クラレンス役の役作りとして、ジャック・ニコルソンをイメージしていました。
ラスヴェガスを経由して、さらにエルヴィス化していくクラレンス
ここで登場するパープル・キャデラック(フリートウッド74年型)は、ハリウッドでこのキャデラックを目撃したトニー・スコットが、「この作品には、この車しかない!」とナンバープレートを控えておき、後日映画撮影のためにそれを購入させたものでした。そして、撮影終了後にこの車はパトリシア・アークエットにプレゼントされました。
デトロイトからラスヴェガスでバカンスを楽しんだクラレンスとアラバマは、ファッション・テイストが一変します。
アラバマは、バービーガールに、クラレンスは、より本格的にエルヴィス・プレスリー化していくのでした。
クラレンス・ルック5
ボーリングシャツ
- ターコイズブルーのボーリングシャツ、半袖
- 半袖のTシャツ
- ウォッシュド・デニムジーンズ
- ホワイトバックス
- シルバーのエルヴィスサングラス
作品データ
作品名:トゥルー・ロマンス True Romance (1993)
監督:トニー・スコット
衣装:スーザン・ベッカー
出演者:クリスチャン・スレーター/パトリシア・アークエット/ブラッド・ピット/ゲイリー・オールドマン/デニス・ホッパー/クリストファー・ウォーケン/マイケル・ラパポート
- 【トゥルー・ロマンス】獰猛なファッションだけが生き残る
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.1|バート・レイノルズを愛する女、パトリシア・アークエット
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.2|パトリシア・アークエットの元祖コギャル・ファッション
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.3|ナイスボディじゃない女のためのパトリシア・アークエット
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.4|クリスチャン・スレーターとエルヴィス・プレスリー
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.5|クリスチャン・スレーターとM65フィールドジャケット
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.6|クリスチャン・スレイターとオタク主導型ファッション文化
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.7|ブラッド・ピット=なんの役にも立たない男
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.8|ゲイリー・オールドマンの狂気