作品名:殿方ご免遊ばせ Une Parisienne (1957)
監督:ミシェル・ボワロン
衣装:ピエール・バルマン/ピエール・ヌーリー
出演者:ブリジット・バルドー/アンリ・ヴィダル/シャルル・ボワイエ
アンリ・ヴィダルの死。
1959年12月10日、私は電話でたたき起こされた。・・・アンリ・ヴィダルの死を告げていた。なんですって。私は押さえきれない感情にとらわれて、電話口で叫んでいた。私は泣きながら叫んでいた。そんな馬鹿な、そんなのいやよ。彼がそんなことに、あんなに生き生きして、陽気で、若くて、ハンサムだったのに、いや、いや、いやだわ・・・・・・・絶望した犬のように、私はいつまでも「いや」と繰り返していた。だがそれは事実だった。アンリはその夜、40歳で心筋梗塞で死んだのだ。・・・私はパジャマの上にオーバーをはおり、アンリが住んでいたサン=ルイ島のランベール館にすぐ連れて行ってくれるように頼んだ。獲物のように待ち構えているカメラマンたちはどうでもよかった。私の友達、私の仲間、私の素晴らしいパートナーが死んだのだ。残りの世界が崩壊してもよかった。たとえ彼のためになにもしてあげられなくても、私は彼のそばに行きたかったのである。
ブリジット・バルドー
アンリ・ヴィダル(1919-1959)と、バルドーの相性は抜群だ。そして、アンリのような母性を擽る男性がモテるのもよく伝わってきます。ジャン・ギャバン系のイヌ顔が、フランスではすごくモテるのです。この人と共演している時のバルドーが一番キラキラして見えるのは私だけでしょうか?バルドーという女優は、演技をする女優ではなく、自然体で映像を焼き焦がす妖精のような存在なのです。
ブリジット・ルック10 シャツ×エプロン・スタイル
- ピエール・バルマンによるベージュのイブニングドレス
- グレーのチェスターコート
- ベージュのレザーグローブ
- ベージュのハイヒールパンプス
ピエール・バルマンのボディコンドレス
ここから物語は、浮気者の夫を嫉妬させるための『ブリジット大作戦』へと展開していきます。ブリジットは、貴賓としてパリを訪れているグレタ女王の夫であるシャルル大公を誘惑するのですが、それってヤバくないのでしょうか?彼女はフランス大統領の娘の役柄なのですから。しかし、そんな心配など誰もしない所に、50年代フレンチムービーの真骨頂はあるのです。
画面からも伝わる、私が好きだからこの服を着ている感は、サンローランの服や、ロエベのバッグをスタイリストによって選ばれた感たっぷりの日本のTV俳優からはとうてい醸し出せないムードに包まれています。スタイルアイコンとは、自分のスタイルを持つ俳優からのみ生まれます。一方、トレンドに乗っかかる俳優は、ただの安っぽい木偶の坊にしか見えません。昨今の日本の女優からスタイル・アイコンが出てこないのは、それだけ個性的なスタイルを持つ女優と、それが示される環境が失われている証拠なのです。ファッションが死に絶えた時、物真似猿の唄が聞こえます。そして、その猿の名をコスプレと呼びます。