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1932|シャネルのダイヤモンドの輝きに満たされていく香り

シャネル
©CHANEL
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1932

原名:1932 Eau de Parfum
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュ
発表年:2013年
対象性別:女性
価格:75ml/37,400円、200ml/66,000円
公式ホームページ:シャネル

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ダイヤモンドの輝きがあなたの欲望に噛み付いた瞬間!

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ジュエリー・コレクションを身につけるガブリエル・シャネル。1937年、パリのカンボン通りの本店にて ©CHANEL

同上 ©CHANEL

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2007年にシャネルのプレステージ・コレクションとして「レ ゼクスクルジフ ドゥ シャネル」がスタートしました。そしてその中の一つとして「1932」は、2013年にオード・トワレとして発売されました。現在、日本で発売されているものは、2016年から発売されているオード・パルファムです。

この香りの名は、ココ・シャネルが49歳の時に、パリで開催した最初で最後のジュエリー・コレクション「ビジュ ドゥ ディアマン」を発表した年(大恐慌から3年後)にちなんで命名されました。

そして2012年に80周年のジュエリー・コレクション(80点から成る)が1週間限定で、ニューヨーク近代美術館の外に巨大なドームを建設し、展覧会が開催され、それに呼応するようにシャネルの専属調香師ジャック・ポルジュが、ジャスミンによってこの香りを創造したのでした。そしてまず最初に展覧会に招待されたゲストに「1932」のサンプルボトルが配布されました。

ダイヤモンドの輝きをまとった香り」(公式ホームページより)です。

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1932年に発表された世界初のハイジュエリー・コレクション

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ジュエリー・コレクション「ビジュ ドゥ ディアマン」は、1929年10月からはじまる世界恐慌の流れに反発して、1932年11月7日から19日にかけて展覧会が行われた、世界初のハイジュエリー・コレクションでした(ジャン・コクトーが展覧会のプロデュースに参加した)。

パブロ・ピカソやグロリア・スワンソンなど当時の著名人が訪問したこの展覧会は、〝9300万個の宝石〟〝80億のファセット〟と報道されました。ちなみに現在残されている写真は、有名になりかけていた頃のロベール・ブレッソンによって撮影されたものです。

この展覧会に先立つ11月5日に、フォーブル サントノーレ29番地の当時のココ・シャネルのアパートメントで2日間の内覧会が行われました。

それはシャネルがその時まで公開していたイミテーション・ジュエリーを一切廃して、「星、星座、流星、彗星、太陽」をテーマにした、プラチナに本物のダイヤモンドをあしらった約50点のコレクションでした。インスピレーションの源は、シャネルが幼少期を過ごしたオーバジーヌの修道院の長い廊下でした。そこには、小石をモザイク状に敷き詰めた星が描かれていました。

何よりも画期的だったのは、それまではトレーに乗せて陳列されていたジュエリー・コレクションを、蝋製のトルソー=メイクを施したマネキンを使用して紹介したことでした。そしてこのジュエリー・コレクションは、大恐慌で苦しむ人々の慈善事業として行われていました。

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〝ダイヤモンドの輝きに満たされる香り〟

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「1932」は、ジャスミンに焦点を当てたパウダリーなウッディ・フローラル・フルーティーの香りです。この香りは、果汁滴るジューシーな洋ナシとフレッシュなグレープフルーツが渦巻く星雲の中に、アルデハイドの流星が突入するようにしてはじまります。

それはまるでジューシーでフレッシュな心地よいフルーツの空気を、アルデハイドが掻き乱すようです。そして、星々は輝きを増します。

やがて、ソフトでリッチなアイリスとムスクがまるで天から素肌に降り注ぐプラチナのように、この掻き乱された星雲を、柔らかなミルキーウェイに変えてゆきます。いよいよジャスミンが輝き始めるのです。

サンダルウッドとベチバーにより厳粛さが加わったこの甘い星雲の中で、ジャスミンは、ローズ、ライラック、カーネーション、イランイランなどがその原型が分からぬほど巧みにブレンドされたフレッシュなフローラルブーケにより華やかさを増し、リップスティックのニュアンスと共に、花々がスパークリングするように華やかに香りを広がらせてゆきます。

ドライダウンは、インセンスが、酸味のあるオポポナックス、そしてムスクとバニラと溶け合い、肌にファセットカットが施されていくように、輝きを与えながら消えてゆきます。それはまるで自分自身の素肌を優しく研磨してくれるようです。

南十字星が見える孤島にあるラグジュアリー・ホテルのダイヤモンドで作られたステージの上でムーランルージュのショーガールたちが招聘され、まばゆいばかりの星空の下で踊り明かす。そんな夢のようなニューイヤーパーティーをシャンパンと月光と花々に祝福され謳歌する、そんな〝ダイヤモンドの輝きに満たされる香り〟です。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイドⅢ』で「シトラス 洋ナシ」と呼び、「香水の名前としてあまりにばかげている。戦時中のココ・シャネルとナチスドイツのいわくつきの過去を考えればなおさらだ。1932年はどんな年だったか。(ヒトラーの後継者の)ゲーリングが国会議長に選ばれ、上海が日本に侵略され、ウクライナでは無数の国民が餓死した。そしてシャネルはジュエリーコレクションか何かを発表した」

「で、この香水? レトロでもなんでもない。どぎつい「ライト ブルー」 系のシトラスのトップノート(表向きはグレープフルーツ調らしいが)に、缶詰入りフルーツみたいなバックグラウンド。ドライダウンではどうにかシャネルらしさを醸し出そうともがき、パウダリーな香りがちらほら顔を出す」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:1932
原名:1932 Eau de Parfum
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュ
発表年:2013年
対象性別:女性
価格:75ml/37,400円、200ml/66,000円
公式ホームページ:シャネル


トップノート:洋ナシ、グレープフルーツ、アルデハイド
ミドルノート:ジャスミン、アイリス、ライラック、イランイラン、ローズ、カーネーション
ラストノート:ベチバー、ムスク、インセンス、バニラ、アンブレット、サンダルウッド、ベチバー