【シャレード】
Charade パリの香りがいっぱいのロマンチック・サスペンス。『ティファニーで朝食を』により映画界とモード界の頂点に到達したオードリー・ヘプバーン(1929-1993)が、『パリの恋人』のスタンリー・ドーネン監督と再びタッグを組み、ついにケーリー・グラントとの共演を果たした〝華麗なるファッション・ムービーの金字塔〟。
オードリーの衣裳は、もちろんユベール・ド・ジバンシィ。モーリス・ビンダーによるポップなオープニング・タイトルとヘンリー・マンシーニのロマンチックなメロディからはじまり、意外なエンディングまで目が離せない1960年のハイセンスを集めた玉手箱のような作品。
アルフレッド・ヒッチコックとケーリー・グラントの名作『北北西に進路を取れ』のような映画を作りたかったスタンリー・ドーネンの一大野心が、オードリーの存在により、60年代後半のウーマンパワーを先取りした、女性が活躍する冒険活劇を生み出すことになりました。
『パリで一緒に』の撮影が終了した翌日の1962年10月22日から撮影ははじまり、1963年1月に終了。そして同年12月に公開され、それまでのオードリーの作品の中で最大のヒット作となりました。
あらすじ
レジーナ・ランパート(オードリー・ヘプバーン)は、同時通訳の仕事をしていた頃の同僚シルヴィとその息子と共に、フレンチアルプスのムジェーヴでスキーを楽しんでいました。レジーナは、大富豪でありながら、まったく素性が分からない夫チャールズとの離婚を考えていました。
そしてパリの自宅に戻ると、アパートメントはもぬけの殻になっており、夫も失踪していました。すぐに夫の死を知り、遺品を渡されたレジーナのもとにスキー旅行で偶然知り合っていたピーター・ジョシュア(ケーリー・グラント)が現れ、彼女への協力を申し出るのでした。
不安の中、アメリカ大使館のバーソロミュー(ウォルター・マッソー)に呼び出されたレジーナは、夫が殺された理由を伝えられます。実は彼は第二次世界大戦中、OSS(CIAの前身)に所属して対ドイツ戦に従事していたのですが、仲間4人と共謀し25万ドル相当の金塊を強奪し、終戦のどさくさに紛れてその金塊を独り占めし、大富豪になったのでした。
やせた背の高いテックス(ジェームズ・コバーン)、大柄で右手が義手のスコビー(ジョージ・ケネディ)らチャールズの元仲間の3人が、25万ドルの在り処を未亡人のレジーナが知っているはずだと執拗に脅迫してくる中、そんなレジーナを助けるピーター。
しかしスコビーからの電話でピーターこそが第四の男カーソン・ダイルであり、「あなたを騙そうとしている」と伝えられるレジーナ。すっかり混乱したレジーナは、バーソロミューに助けを求めるのでした。
さてピーターは本当にカーソン・ダイルなのでしょうか?そしてバーソロミューは本当に彼女の味方なのだろうか?今ここに華麗なるシャレードがはじまろうとしているのです。
ファッション・シーンに与えた影響
『シャレード』は、1953年7月にはじめて出会ったオードリー・ヘプバーンとユベール・ド・ジバンシィにとって10年目の友情となる1962年から63年にかけて生み出された作品です。
10年目を迎える二人の愛の結晶とも言える本作の「オードリー×ジバンシィルック」は、60年代の希望と喜びが反映されたスタイルで首尾一貫しています。
この作品がファッション業界に影響を与えた要素を連ねていきましょう。それは以下の6点です。
- オードリーが教えてくれるジャッキースタイルの魅力
- 色鮮やかなコートコーデの教科書
- トレンチコートとレインブーツの正しい合わせ方
- キトゥンヒールパンプスのすすめ
- ケーリー・グラントの〝最後のファッション講座〟
- ジェームズ・コバーンのモッズルック
この作品は、コートと帽子の組み合わせの教科書であり、コートを脱いだ後のドレスも含め、さらには、高すぎない靴であるキトゥンヒールパンプスが、ヒールは高ければ高いほど良いというわけではないことを教えてくれます。
ハイヒールパンプスとは、ウルトラマンのようなファッションアイテムであり、時間がたつと、肉体的にも視覚的にも耐えられないものであるということを教えてくれます。
オードリーがなぜ〝永遠のファッション・アイコンなのか?〟それは彼女が『ローマの休日』でハイヒールを捨て、フラットシューズを選んだように、本作においても、キトゥンヒールパンプスをチョイスしたところにあるのです。
作品データ
作品名:シャレード Charade(1963)
監督:スタンリー・ドーネン
衣装:ユベール・ド・ジバンシィ
出演者:オードリー・ヘプバーン/ケーリー・グラント/ウォルター・マッソー/ジェームズ・コバーン/ジョージ・ケネディ