ウォーター リフレクション
原名:Water Reflection
種類:オード・パルファム
ブランド:トバリ
調香師:不明
発表年:2019年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/13,200円、100ml/16,500円
タカラヅカのトップオブトップに捧げられた香り
1575年に創業し、1965年に線香「青雲」のヒットにより、翌年より社名を日本香堂に改めた線香製造メーカーが2018年に生み出した日本発の香水ブランドそれが『TOBALI トバリ』です(2016年には京都・二寧坂に〝香十〟という店舗もオープンしています)。
『TOBALI=帳(とばり)』とは、覆い隠し、秘める布=空間を隔てて見えなくする垂れ絹のことです。谷崎潤一郎の『細雪』の4人姉妹のひとり雪子の持つ〝魅力をひけらかさず、敢えて内に秘める事により、奥ゆかしさの中から美は昇華する〟という、日本女性の独特の感性が導き出した〝秘める美〟がこのブランドの香りの根底に流れています。
全ての香りに共通したベースノートとして「Hidden Japonism 834(合成ウード)」が使用され、〝色気と知性〟〝強さと情愛〟〝気品と狂気〟など、相反するイメージが表現されています。すべての作品は、クリエイティブデザイナー(ディレクター)の米津智之氏により生み出されています。そんなトバリから、2019年に第6弾の香り「ウォーター リフレクション」が発売されました。
宝塚歌劇団の伝説の男役(=トップオブトップ)の春日野八千代様(1915-2012)に捧げられた香りです。〝水の反射〟という名のこの香りは、女性でありながら、男性にはない華麗さにより〝第三の性=究極に美しい人〟となる、孤高の女優をテーマにした香りです。
〝華麗に秘める孤独〟。私はこのトップオブトップの香りを嗅ぎ天海祐希様か『パタリロ!』のマライヒ(藤田淑子様の声で)を強く連想しました。あらゆる国の女性の美しい要素を併せ持つ〝究極の和風美女〟祐希様。
女性だからこそ、化粧することにより、女性が憧れる男性の姿(男性像ではなく、あくまで理想の姿、それはアニメや漫画の世界の理想の男性のようなもの)に変身することが出来るのです。それはまるで70年代の少女漫画(『ベルサイユのばら』など)から抜け出てきたような存在を描き出した香りなのです。
白い月よりも、輝いて横切るハレー彗星のように…
長身で手足の長い女性が、メイクを施し、現実には存在しない絶世の美男子を演じる。その姿で街を歩くと、後ろ指を指されるかもしれませんが、劇場の中では、観客の憧憬の眼差しを一身に集めることが出来ます。
ライム、タンジェリン、ベルガモットによる、この上なきほど華やかなシトラスの三重奏からこの香りははじまります。それはまさにラインダンスのように晴れやかにキレのある壮大なシトラスの煌きです。
すぐに、静かにうっすらと蜃気楼のようなウードが酸味の効いたほのかな重みで、シトラスの酸味と結びつき、奥行きと静けさを与えてゆきます。
そして、墨が現れます。まるで舞台が暗転し、スポットライトに照らし出された黒いタキシードを着たトップオブトップが現れるように、現実の男性のダンディズムとは無縁の、華やかで透き通るように美しい〝夢のような男性〟の香りに包まれてゆくのです。
やがて、白いドレスを着た娘役のような純白のくちなしが到来します。グリーンティのたおやかな風に乗り、黒い墨で覆われた水面を照らす、天心の月のやうに白い花が、花の甘やかさと墨の深遠さを混ぜ合わせ、孤高の花の香りで全身を包み込んでくれるのです。
最後に、エボニーとムスクのハーモニーがどこまでも和の静かなる佇まいをくちなしの甘さに加え、月よりも輝く星=ハレー彗星のように、天空を支配するトップオブトップの香りへと格上げしてくれるのです。
さあ、自分の星に従うのよ!どこまでも美しい男子(第三の性)に捧げられた香りです。
香水データ
香水名:ウォーター リフレクション
原名:Water Reflection
種類:オード・パルファム
ブランド:トバリ
調香師:不明
発表年:2019年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/13,200円、100ml/16,500円
トップノート:ライム、タンジェリン、ベルガモット
ミドルノート:くちなし(ガーデニア)、墨、グリーンティ、ヴァイオレット
ラストノート:エボニー、ムスク