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【ル ラボ】サンタル33(フランク・フォルクル)

ルラボ
©LE LABO
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サンタル33

原名:Santal 33
種類:オード・パルファム
ブランド:ル ラボ
調香師:フランク・フォルクル
発表年:2011年
対象性別:ユニセックス
価格:1.5ml/990円、15ml/13,200円、50ml/29,700円、100ml/42,900円
公式ホームページ:ル ラボ

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香水史に名を刻む、21世紀を代表する香りのひとつ

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2011年当時、有名人の名を冠したブランドのフレグランスがフレグランス市場を席巻していました。そういったマーケティングが主流になっていた頃、ルラボは、何年間も誇大広告へのアンチテーゼを打ち出していました。

平凡なブランド名とシンプルなスタイルで〝気づかれずにハイセンスを演出してくれる〟イット・バッグのように、2013年までに「サンタル33」は瞬く間に一種のカルト的な秘密となり、サンダルウッドとシダーの香りの中でささやかれ、知る人ぞ知る存在となった。

ニューヨーク・タイムズ(2015年)

2006年3月に発表された10の香水と共に、ル ラボの歴史は始まりました。そして2010年に「ウード27」が誕生し、2011年に「サンタル33」が誕生しました。この香りの登場により、ル ラボは、ニューヨークを中心に世界中のファッショニスタの心を掴むきっかけになりました。

「サンタル33」の「33」とは、33種の香料により生み出されたという意味を持ちます。フランク・フォルクルにより調香されました。

この香りから、サンダルウッド特有の温かくクリーミーな、素肌にとろけて匂い立つウッディな輝きが、人々を魅了するようになりました。

創業者の一人エディ・ロスキーが「当初この香りもファースト・コレクションに入れる予定でしたが、コレクションをタイトにしたかった上、ベストの香りとは思えなかったので、この香水はやめました」と発言しているように、実は2006年にすでにこの香りは誕生していたのですが、代わりにセント・キャンドル「サンタル26」300個に、残り少ない資金を注ぎ込んだのでした。

すぐにグラマシー・パーク・ホテルでこのキャンドルは採用され、ルラボの最初の2、3年間の売り上げの約70%を占めるほどのヒット作となりました。ジェニファー・ロペスは、毎月100個、時には200個「サンタル26」を注文していたと言われています。


もう一人の創業者ファブリース・ペノーが、昔のマルボロの広告にインスパイアされ、アメリカ西部への頌歌を創り出そうとした「サンタル33」の海外の公式サイトの説明文がとても興味深いです。

アメリカ西部の荒涼とした広い平原で、ひとり馬に寄りかかり優雅にタバコをふかすカウボーイを想像してほしい。焚き火から柔らかく漂う煙、頭上には藍色の夜空が広がっている。周囲には、やわらかな砂漠の風を除いて何もない。あなたは完全に自由だ。人を酔わせる夢のような広大で野性的な普遍性に触れる香水。
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「サンタル33」誕生秘話

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私が香りを創造するとき、非常にラフなアコードから始めて、何かが起こるまで…何かが起こるまで…遊びます。「サンタル33」の場合は、試作品93番あたりから何かが始まりました。パワフルな可能性を秘めた何かがそこにあると感じたんだ。その後、何百ものトライアルに没頭し、93番にあったテーマが失われていることに気づいた。

だから私たちは1年分の仕事を投げ出して、93番に戻り、やり直すことにしました。そして、付け加えられた鍵が、この香りの秘密であり、世の中に出回っているすべてのコピー商品が同じ効果を得ることを妨げるものなのだ。

エディ・ロスキー

ル ラボの人気商品である「サンタル26」をフレグランスにして欲しいというお客様の声を耳にしていたファブリース・ペノーは、2010年6月に、ニューヨークのリトルイタリーにあるスポーツ・バーでワールドカップを観戦していました。

この時、目の前の男性の香りが気になり、ついにはその男性に「なぜそんなにいい匂いがするのですか?」と尋ねました。するとそのフランス人の男性は「エリザベス通りにある小さな店で買ったルームスプレーなんだ」と答えました。

なんと自分の店の香りだったことにびっくりしたペノーはその場ですぐにロスキーに連絡し、次の香りをサンタルにすることに決定したのでした。そして、その香りを調香したフランク・フォルクルに連絡がいったのでした。

上記の話の流れと矛盾はあるのですが、ペノーは違うインタビューで「3年間で417回試作しなおした」とも答えています。

私は、結局商品化されなかった間もこの香りをよく付けていて、良いコメントを周りから貰っていました。何年もの間ファブリースに売るように説得していましたが、「サンタル26」の魅力が、香水になると消えてしまうのではないか?という懸念を彼は感じていました。しかしルームスプレーをつけた男性の匂いを嗅いだとき、それがすべての懸念を打ち砕く引き金となりました。

少し深みのある、より心地よい香りに調整し、数週間で完成しました。

フランク・フォルクル

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カメレオンのように変幻自在に香りの印象を変えていく〝魔法の木の香り〟

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「サンタル33」は〝完璧な不完全さ〟をテーマにした私の最高傑作であると自負しています。私が調香師として成し遂げようとしていることを完全に体現しています。それは、わざと細部を見過ごし、あらゆる特徴を磨き上げて、やりすぎと思われるような不完全な面を持つものを作り出しながらも、すべてが一体となって、深い意味を持つ美しいものを生み出すのだ!

フランク・フォルクル

この香りの特徴は、いろいろなことが同時に起こっていることです。強くて、パワフルで、インパクトのあるノートがたくさん入っていて、それらが喧嘩をしたり、お互いをなめらかにしたりしています。でありながら、複雑であると同時にシンプルなんです。

フランク・フォルクル

灯りが消えた後に官能が立ち昇る場所〟を生み出すというシンプルなテーマから誕生したこの香りは、その〝とても潔く、清らかな洗練された香りの佇まい〟により、ミニマル=ノームコアという当時の時代の流れに乗りました。

そしてニューヨークやパリのファッショニスタの間でマストハブ・アイテムとなり、瞬く間にル ラボを21世紀のフレグランスの新たなる盟主への道を歩ませることになりました。

この香りの成功からルラボの興隆がはじまったと言っても過言ではありません。

大都会の中に、自然の木の安らぎを生み出していくように、ただひたすら自然の木が持つ、落ち着いた雰囲気と、神秘的で荘厳な印象をゆるやかに漂わせてくれるこの香りは、フレッシュスパイシーなカルダモンとアイリスとヴァイオレット(この香りの準主役)、そしてピリっとした酸味と苦みを生み出すパピルスが混じり合う、独特なみずみずしさからはじまります。

オーストラリアン・サンダルウッド(Santalum spicatum)は、インド産のマイソール・サンダルウッド(Santalum album)と比較すると、より乾燥していて、クリーミーさは弱いが、ややスモーキーな甘さがあります。どこかアトラスシダーに似た鋭さがあります。
天然のサンダルウッドの精油が持つ典型的な美しさを大切にし、カルダモン、レザーアコード、シダーを配合することで、サンダルウッドのクリーンで心地よい側面と調和するスパイシーで甘い感覚をもたらし、アンバーグリス(アンブロキサン)とムスクのタッチが香水の心地よい柔らかさを高めています。

そして、スモーキーさとクリーミーさがひとまとめになった夢のような,イチジクを思わせるサンダルウッドがやって来るのです。まるで心に瑞煙がかかるように、心が透き通っていくようです。

さらに、シダーウッドのフレッシュなドライ感がアクセントとして効いており、ムスキーなレザーが蜃気楼のように背景でゆらめいているのです。最初から最後まで、アイリスとヴァイオレットが、スモーキーな木の香りを清廉としたものに変えていく〝甘く淡い風〟の役割を果たしています。

絶対にあなたを裏切らない誠実な友人のような存在の香り。嬉しいときも悲しいときも、その感情を一緒に分かち合いたくなる香り。周りさえも、幸せな気分にしてくれる香り。でありながら、周りを魅了するミステリアスな何かをどんな鈍感な人に対してさえも感じさせる香り。

麻布台ヒルズのようなとびきりラグジュアリーな建物の内覧会から、日常の生活の中まで、カメレオンのように変幻自在に香りの印象を変えていく〝魔法の木の香り〟とも言えます。

ブラッド・ピットからジャスティン・ビーバーに至るまで、多くのセレブ御用達の香りです。

この香水のカメレオンのような性質は、官能的なスモーキーな香りから、BDSMプレイをしている時に感じるレザーの香りへと変化し、イチジクのような香りに再び調子を変えることで、商業的な香水の味気なさから解放されたいと願う人々の間で瞬く間にヒットした。

シドニー・モーニング・ヘラルド(2020年)

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そして、今。

これは一時代を築いたフレグランスの代償だ。2011年から2013年にかけてこの香りに出会い衝撃を受けた世界中の最も洗練された人たちが、かつて自分たちのクールさを養うために「サンタル33」を使っていたのに、今ではそれが自分たちだけのものでなくなった事実を嫌悪し、それを否定することがクールになっているのは興味深い。

ファブリース・ペノー(2020年)

かつて「サンタル33」を身にまとうことは、ごく限られた人だけが理解できる秘密の握手のようなものでした。しかし、最も洗練されたものだと言われていたものが、多くの人々に知られるようになり、拡散し、どこにでもあるような、凡庸なものに見えてくるのは、時の流れの中で、しょうがないことです。

そして今では「サンタル33」は、ルラボ入門編の香りの位置づけとなっているのですが、後、10年も経てば、再び、一時代を築いた偉大なるフレグランスとして再評価されることでしょう。

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香水データ

香水名:サンタル33
原名:Santal 33
種類:オード・パルファム
ブランド:ル ラボ
調香師:フランク・フォルクル
発表年:2011年
対象性別:ユニセックス
価格:1.5ml/990円、15ml/13,200円、50ml/29,700円、100ml/42,900円
公式ホームページ:ル ラボ


シングルノート:オーストラリアン・サンダルウッド、レザー、パピルス、ヴァージニア・シダー、ヴァイオレット、カルダモン、アイリス、アンブロックス