オー デ サンス
原名:Eau des Sens
種類:オード・トワレ
ブランド:ディプティック
調香師:オリヴィエ・ペシュー
発表年:2016年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/16,940円、100ml/23,100円
公式ホームページ:ディプティック
「考えるな!感じるんだ」=〝感覚の水〟
ディプティックから2016年に発売された「オー デ サンス」は、オリヴィエ・ペシューにより調香されました。〝sens(サンス)〟とは、フランス語で〝感覚〟の意味です。すごく変わっているのですが、この香りの名は〝感覚の水〟なのです。
それは、まさにブルース・リーが『燃えよドラゴン』(1973)の中で言った「Don’t think! Feel.(考えるな!感じるんだ)」の台詞を香りで示したフレグランスとも言えます。
五感(嗅覚、味覚、触覚、視覚、聴覚)のすべてを刺激するという発想から生まれた香りで、ビターオレンジにその役割を託しています。
全身で、感じるオレンジ
果皮から抽出されるビターオレンジ精油、葉と枝から抽出されるプチグレン、花を蒸留し抽出されるネロリによって生み出されるフレッシュなビターオレンジの風に包まれるようにしてこの香りははじまります。
そんなビターオレンジの芳香の向こうから聞こえてくる湿った四季のくすぶり。ディプティックというブランドは、四季の持つうら悲しさと期待感を同時に表現するのがとても上手なブランドです。
すぐにビターオレンジの爽快感の中に、溶剤抽出された温かみのある甘いオレンジ・ブロッサムが注ぎ込まれてゆきます。それはまるでビターオレンジの苦みと甘みが、反発し合いながらも、時に、引き寄せあい五感を戸惑わせる不協和音の波に溺れていくようです。
やがて、この香りのもうひとつのテーマである〝予期せぬ香り〟との遭遇がはじまります。
フレッシュなペッパーのようなジュニパーベリーのシャープな香りが、プチグレンの苦みに活力を与え、フレッシュなネロリと一体化してゆきます。一方で、乖離されたオレンジ・ブロッサムは、しばらく経つとグリーンな中に何とも形容しがたく魅力的なスパイシーな甘さを含むアンジェリカを引き連れ、苦みと甘みの不協和音の中に、得も言われぬ中毒性を生み出してゆきます。
ドライダウンは、ホワイトムスクと共に、アーシーなパチョリが、どこまでも美しい輝きに包まれたビターオレンジに、ミステリアスな側面を付け加えてくれます。つまりは言葉ではなく、感じるオレンジなのです。
きまぐれオレンジな香り
この香りの面白さは、プッシュする回数によって全く違うビターオレンジを演出してくれるところにあります。軽くワンプッシュするとフレッシュ・ビターなオレンジの香りに包まれるのですが、たっぷり何プッシュかするとジューシーなオレンジの香りに包まれ、ジュニパーベリーとアンジェリカがより良い仕事をしてくれます。
イチジクの「フィロシコス」のビターオレンジ版とも言えるこの香りの最大の魅力は、毎日同じ香りがしないところにあります。毎朝、専属調香師が、大自然の中にあるラボの中で、ビターオレンジの各部位を使用し、気まぐれに調合して渡してくれるような〝きまぐれなオレンジの香り〟です。
ボトルのラベルの裏には、オプ・アートと重ね合わされたオレンジの樹のイラストが描かれています。そして、この香りの名には、ディプティックのオードトワレの名には〝O〟の文字を入れるというルールが破られています。
ときどきトム・フォードの「ネロリ ポルトフィーノ」の香りがはっきりと顔を出す不思議な魅力のある香りです。
香水データ
香水名:オー デ サンス
原名:Eau des Sens
種類:オード・トワレ
ブランド:ディプティック
調香師:オリヴィエ・ペシュー
発表年:2016年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/16,940円、100ml/23,100円
公式ホームページ:ディプティック
トップノート:オレンジ・ブロッサム、ビターオレンジ
ミドルノート:ジュニパーベリー
ラストノート:アンジェリカ、パチョリ