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『おしゃれ泥棒』Vol.1|オードリー・ヘプバーンがすごいデザインの帽子と共に現れる。

オードリー・ヘプバーン
オードリー・ヘプバーン
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『ローマの休日』から13年の時を経て、再びウィリアム・ワイラーとタッグを組みました。

ウィリアム・ワイラー(1902-1981)という映画監督は、オードリー・ヘプバーン(1929-1993)にとって特別な存在でした。なぜなら彼こそがオードリーがハリウッドの王妃の座を体感することになった『ローマの休日』(1953)を監督した人だったからです。

ワイラーは、納得がいくまで何度でも撮影を繰り返す監督でした。例えば、『ローマの休日』の僅か3分のベスパのシーンの撮影のために6日間費やしたと言われています。ちなみに、その日数の中には、オードリーが快適にべスパを運転する姿に、興味を持ったワイラーが試乗し、大転倒し、病院行きになった日数も加えられています。

他にもオードリーが追っ手から逃れるためにサンタンジェロ運河に飛び込むシーンは10回も行い、オードリーのほっぺに吹き出物が出るほどでした。この吹き出物による凹凸は実際に映像の中でも確認できます。

撮影(ローマで半年かける)が行われた1952年夏は40度を越すローマ史上最も暑い夏でした。そんな中、スペイン広場でアイスクリームを食べる2分間のシーンのためにこれまた6日間撮影が行われました。そんな過酷な撮影を経て、不滅のファンタジー作品は生み出されたのでした

「真に女優と言えるのは、グレタ・ガルボとオードリーと、そして、イングリッド・バーグマンくらいしかいないだろう」とワイラーは後日語りました。そして、バーグマンは本作のプレミアでオードリーの演技に感動し、人目もはばからずに泣いていました。

その後、二人は『噂の二人』(1961)を一緒に作り上げ、更に三作目であり、二人の最後の作品となったのがこの『おしゃれ泥棒』でした。オードリーがハリウッドの王妃となり、ジバンシィの女神となり、そして最後に華やかなオードリーの姿を見せてくれた作品と言えます。

『パリです。オードリーです。世界の恋人です。100万ドルをシックに盗みます!』素敵なキャッチコピーです。

公開当時のキャッチコピーにピッタリな宣材写真です。

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オードリー×ジバンシィの集大成

オードリーの定番・オリバー・ゴールドスミスのサングラスとジバンシィ・ファッションのアンサンブル。

撮影当時30代半ばだったオードリーの大人のキュートさが存分に楽しめる作品です。

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ルイ・ヴィトンを持つオードリーとユベール・ド・ジバンシィ、1960年、パリ。

女性はたんにドレスを身につけるだけではない。ドレスの中で生きるのだ。

ユベール・ド・ジバンシィ

オードリー・ヘプバーンは、20世紀のみならず21世紀においてもファッション・アイコンとして、あらゆる年代の女性の憧れです。それは恐らく、20世紀よりも、21世紀において、より熱狂的なファンを獲得し続けています。

そんな彼女の影響力の秘密は何でしょうか?オードリーが教えてくれること。それは〝ファッションとは、自分自身のスタイルを見つけ出し、守り通すこと〟です。時代の流れを取り入れても、必ず自分らしさを忘れないのが、オードリー・スタイルなのです。

そんなオードリーにとって、オードリー・スタイルに欠かせない存在がユベール・ド・ジバンシィでした。1953年に二人は初めて出会いました。オードリーが『麗しのサブリナ』の衣装を捜し求め、ジバンシィのメゾンを訪れたのがきっかけでした。

この出会いが20世紀の女性のファッションに大いなる革命をもたらしたのでした。マリリン・モンローやグレース・ケリーとはまた違う女性の魅力。それはスリムな女性美の革命でした。

30代後半に突入していくこの作品の中の数々のオードリー・スタイルこそ、ジバンシィと生み出したスタイルの集大成と言えるのではないでしょうか。

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60年代モッズ・ファッション×オードリー

今までのイメージとはまったく違う本作のオードリーの雰囲気が、当時の観客を驚かせました。アンドレイ・クレージュ風の鉄兜ハット。

60年代ファッションを象徴する映画のひとつ。大人の女性のお茶目なムードを愛でる作品。

透き通るような透明感は健在です。

この作品でオードリーはそのイメージをがらっと変えるメイクとファッションに身を包みます。1960年代半ばから後半にかけて、モード界のトレンドとして、メイクもヘアスタイルもファッションも、すべてが強調されたものになりました。

そんな時代の空気をオードリーとジバンシィは巧みに取り込み、60年代の大人のオンナのエレガンスに昇華させたのでした。

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ニコル・ボネのファッション1

モッズ・ルック
  • デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
  • アンドレイ・クレージュにインスパイアされたクリーム色のウールの鉄兜型の帽子
  • オリバー・ゴールドスミス。白縁のサングラス
  • エルメスの白のレザー手袋
  • アイボリーウールの3ピース。Aライン。サーキュラー・スカート。ラグランスタイルのジャケットの下はクリーム色の半そでのシルクリネンのブラウス
  • 白のエナメルベルト
  • ネイビーブルーのプリントの白のシルクスカーフ。ジバンシィ1965SS
  • 白のパンプス(シャルル・ジョルダン1965SS)
  • 白のストッキング
  • ジバンシィの白のハンドバッグ

レザーグローブはもちろんエルメス。

スカーフにネイビーがワンポイント入っているのがポイントです。

アウトビアンキの1965年型の〝エデン・ロック〟のカブリオレ、全長3mのボディに500CC。

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ウールのハットと、ウールのジャケット。上質な生地感は、写真を通しても容易に伝わります。

今でもすごく参考になるオールホワイト・ルックです。

白のハンドバッグにも注目して欲しい。

オードリーは決してハイヒールを履きませんでした。

派手なヘアスタイルとメイクアップと一線を画するシンプルでエレガントなファッションです。

ネックラインがとても素敵。

日本の映画雑誌に掲載されていた写真。

全体のバランスの良さが分かる写真。

ジャケットを脱いだ後の、シンプルなネックライン。

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映画では使用されなかったレオパルド・ハット

ジャケットはオープニングで着ているものです。

シャレード』を思い出させます。

ジャケットの仕立ての良さがよく分かります。

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ジバンシィのネグリジェ

ヒッチコックを読むオードリー。しかし、彼女はヒッチコックの作品に出演することはなかった。

オードリー主演のヒッチコック作品も見てみたかったです。

コートとネグリジェとレインブーツの見事な配置。

30代の女性のナイトウェアに、洗練と少女らしさという相反する要素を詰め込んだ見事なデザインを、エレガントなヘアスタイルで着こなすオードリー。

彼女が誰よりも洗練されていた理由のひとつは、やはり、色々なヘアスタイルを流行させてきた点にあります。ファッションとは、つまるところトータルなものであり、自分自身を題材にする生きるアートなのです。

オードリーはそれを誰よりも知る人だったからこそ、ファッションの中のリアルとファンタジーの要素の中の、ファンタジーのみをピックアップし、「永遠の妖精」のタイトルを勝ち取ったのでした。

リアル・クローズから生み出されるものは、ファッションではなく、ただのライフスタイルです。夢もアートも存在しない空間からファッションという言葉の要素は何一つ満たされることはないのです。

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ニコル・ボネのファッション2

ナイトガウン×ピンクコート×レインブーツ
  • デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
  • ピンクのシルクナイトガウン。ジバンシィ1965SS。白いレースが首、手首、すそに。七分袖ミニでスリットが両サイドに。丸首
  • パテントのレインブーツ(ガロッシュ)。レネ・マンシーニ
  • ピンクのウール・コート。比翼

ネグリジェの素材感がよく分かる写真。

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ポリ塩化ビニルのレインコート。

レインコートの襟の形状がよく分かります。

ウィリアム・ワイラー監督と談笑するオードリー。

ネグリジェとコートの凄い組み合わせ、

リッツパリ前のヴァンドーム広場でキスをする二人。

撮影現場に現れたマリア・カラス。若き日のカラスは部屋中のあらゆる場所に『ローマの休日』のオードリーの写真を張りダイエットに成功した。

作品データ

作品名:おしゃれ泥棒 How to Steal a Million(1966)
監督:ウィリアム・ワイラー
衣装:ユベール・ド・ジバンシィ
出演者:オードリー・ヘプバーン/ピーター・オトゥール/イーライ・ウォラック/シャルル・ボワイエ