まるで地面師のように、メーカーが作り上げた香水を乗っ取る行為=〝乗っ取り香水〟商法
2024年8月5日に明らかになったある事件が、香水業界と香水愛好家たちに、衝撃を与えました。
その事件とは、日本最大の規模で小分け香水販売を行っていた『香水の館』(「ジーラック」社長、中嶋恒彦容疑者)が、正規品をエタノールで薄めたものや、自社製品と混ぜたものなどを販売した疑いで愛知県警に、詐欺や商標法違反で逮捕されたものでした。この時、偽物を調合するマニュアルなども押収されました。
『香水の館』事件が、悪質なのは、シャネル、エルメスやディプティックなどの香水を格安で、小分けで購入したいというライトユーザー層をターゲットにした大掛かりな詐欺行為だったからです。
〝モテる〟〝バズる〟という言葉に弱い層をメインターゲットに、チョイスした香水を〝乗っ取り〟、粗悪小分けし、販売し、その香水を作り上げた調香師やメーカーが心血を注いだ多大なる労力までも、食い物にしたのですから、弁解の余地のない〝不法行為〟であることは言うまでもありません。
このような事件が明らかになった今、人々は、小分け香水やサブスク香水に対して、以前のように向き合うことは不可能でしょう(TikTokやYoutubeで小分け香水をお薦めしている方々も、今後は止めた方が良いと思います)。
パンデミック後、世界的に、香水の価格が急騰する中、一般的に、人々はフルボトルで香水を購入したくない、もしくは沢山色々な香水を試してからフルボトルで購入したいと考えるようになりました。そんな人々の心につけ込み、地面師のように〝乗っ取り香水〟を販売する無法地帯に、現在の日本はなっています。
何よりも、この〝乗っ取り香水〟の問題点は、本当にしっかりとした小分け(&サブスク)を行っている所とそうでない所の見分けが全くつかない所にあります。
- 小分けの為に購入した香水をどこから仕入れているのか?メーカーから小分け許可をもらっているのか?
- 正規品であっても、賞味期限についてはどのように管理しているのか?
- 小分けを行うために、どのような機材を使用し、その機材を使用したプロセスは、本当に、その香りの本来のパフォーマンスを保証してくれるのか?
- 小分け香水を作る人は、ずっと同じ人が、何か資格を保有して行っているのか?ある日、突然、悪魔の囁きに乗ってしまい、利益優先のため〝粗悪小分け〟を行わない対策が行われているのか?
- なぜ『香水の館』のような〝乗っ取り香水〟商法が(もっとも厳しい楽天において)放置されてきたのか?
少し考えただけでも、小分け香水に対して〝100%クリーン〟な製品だと安心できない部分があるように感じることでしょう。そして『香水の館』事件により、もしかしたら市場に流通している小分け香水のほとんどが〝乗っ取り香水〟なのではと、考えてしまうのは、ごく自然の流れだと思います。
だからこそカイエデモードは、香水業界において、誰も触れたがらない香水詐欺の実態について本格的に調べていくことが、何よりも、日本の香水文化を豊かにするために、必要なことだと考えています。
ここで、カイエデモードが今、一番気になっている世界的な香水販売の変化について記されたひとつの記事をご紹介させて頂きたいと思います。DAZEDの2024年の『デュープ香水工場(香水複製工場)の急増の内幕』という記事です。
欧米圏のZ世代の間で流通している、デュープ香水
英国全土で、秘密の香水複製工場が24時間体制で稼働している。寂れ果てた工業団地にある、こうした秘密の研究所は、最も人気のある香水のコピーを作成するのに忙しい。白衣を着た作業員たちが最新の香水のピペットを巨大な機械に押し込むと、その中に含まれるアルコール、オイル、芳香化合物の特定のブレンドが明らかになる。それらの原料が調達され、再び混ぜ合わされる。その結果は?デュープ香水だ。
こうしたデュープ香水を目にしたことがある人は少なくないだろう。SNSには、あらゆる香水の安価なレプリカを宣伝する魅力的な広告が溢れている。デュープ文化が急成長しており、メイクアップのリメイクやスキンケアの代用と同様に、私たちはこうしたクローン香水のアイデアに親しみを感じ始めている。
英国をはじめとして、欧米圏では、デュープ香水のスタートアップ・ビジネスが大盛況だという内容の記事です。デュープ香水とは、海賊版香水=乗っ取り香水とは異なり、本物を装っていないレプリカのことを指します。
この商法の特徴は、〝インスピレーションを受けた〟香水として、オリジナルの香水名を明記しているのですが、まったく同じ香りがするとは約束をしていない所がポイントです(でも実際は限りなくオリジナルに近く作られている)。
ちなみに、デュープ香水はガスクロマトグラフィー質量分析法を使用してラボで分析し作られています。このような香水が欧米圏で人気がある理由は、香水価格の高騰に対して、人々が強い不信感を抱いているからだとこの記事は分析しています。
高級香水を高価にしているのは、ほとんどの場合、原料ではない。むしろ、マーケティング(と大幅な値上げ)がこのような高価格を生み出しているのだ。予想通り、すべては極秘裏に進められているが、事情通によると、実際の液体自体のコストは、全体の価格のわずか1%に過ぎないという。
日本にも恐らくそう遠くないうちにデュープ香水が、市場を席巻する可能性があります。
一方、日本は、香水詐欺天国である。
しかし、この記事を拝読した後、日本を含むアジアのどこかの寂れた工業団地で、デュープ香水ですらない、粗悪な原料や有害な混ぜ物で作られた〝乗っ取り香水〟が大量生産され、それがフリマで出品されている、ルラボやトム・フォードの露骨に安い香水ではないだろうか?と私は考えました。
さらに、フリマでよく売られている小分け香水は、もしかしたら、そういった偽造香水のボトルをフリマで購入し、〝乗っ取り香水〟商法に活用しているという疑念です。
2015年の記事になりますが、かつて英国日刊紙〝インデペンデント〟が「警察によると、闇工場から押収した海賊版香水を分析した結果、その大半に、シアン化物、人間のおしっこなどの有毒化学物質が含まれていると発表された」とレポートしていました。
日本は今、そんな粗悪な偽造香水の無法地帯であり、そういった〝毒の水=悪魔の水〟を小分けで販売する〝乗っ取り香水〟商法天国になっているのです。そして、このような商品を購入し〝良くなかった〟〝香りのモチが悪かった〟などという感想をSNSやアットコスメなどで発信してしまう悪循環も生み出してしまっているのです。
それは、日々、香水を実店舗で販売している販売員にとって、どれほど、哀しいことでしょう。
トム・フォードのロスト・チェリーの香水の100mlの新品ボトルが、今現在もメルカリで4000円で出品されています。これは1000%偽造香水です。でも放置されています。
カイエデモードは、そんな香水詐欺天国である日本の現状を変えていくために、香水を取り扱うメーカーに対しても、積極的に働きかける必要があると考えております。そのため、香水詐欺撲滅運動を開始することにいたしました。