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『修羅雪姫』Vol.3|梶芽衣子様と『キル・ビル』

梶芽衣子
©TOHO
梶芽衣子
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クエンティン・タランティーノが愛した作品

中原早苗を襲撃する白無垢姿が、身震いするほど美しいです(真夜中にこんな女性に出会ったら、間違いなく逃げてしまうほどの幽玄さです)。そしてこのファッションこそが、クエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル Vol.1』(2003)のルーシー・リューの白無垢姿へとつながっていくのでした。

タランティーノにより『修羅雪姫』は、ほとんど忘れ去られたカルトムービーから〝世界へと羽ばたいていった〟のでした(『キル・ビル』の白無垢シーンの撮影の間、毎日この作品がモニターで流されていました。そしてタランティーノは「俺が撮りたいのはこれだ、見ろ!」と叫んでいました)。

梶芽衣子様の、艶っぽい着物の着こなしが堪能できるという点で、タイムレスな日本の和服の教科書と言って差し支えないほどに、その所作の端々(人の殺し方以外)において、とても参考になる作品です。

それにしても、あの最後にも登場する黄色い蝶が舞う着物の美しさ。女として生まれたのならば、一度は着てみたい着物です。

とにかく私が自信をもって言えることは、どんな作品でも、受けた仕事でもいい加減にやったものは一切ないです。

梶芽衣子

切れた布地から見える白い肌がとても艶っぽい。©TOHO

『キル・ビル Vol.1』(2003)のルーシー・リュー

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着物を着たハードボイルド

これぞ!修羅雪姫!©TOHO

©小池一夫 上村一夫/小池書院

上村一夫の描く、修羅雪のキャラクターとしての凄みは、なによりもその「目」にあった。

宿命によって怨念と修羅の道を歩まねばならぬ哀しみをたたえながら、一方で、強い意思と自我を感じさせる目・・・上村描く修羅雪こと鹿島雪の目は、そんな力を持った目であった。

だから、この『修羅雪姫』に映画化の話が持ち上がったときには、生身の女優であの「目」を表現できるか・・・と一抹の危惧も、実は抱いたのだが、修羅雪を演じるのが梶芽衣子さんであると聞かされたとき、その危惧は消し飛んだ。

それより以前に、『さそり』の主人公・松島ナミを演じた梶芽衣子さんのことは、もとより知っていたし、ファンでもあった。なによりも、目の強さが印象に残る女優さんであった。あの梶さんならば、私たちの作り出した修羅雪というキャラクターを、託すに適役!と確信できた。

そして完成した映画『修羅雪姫』の中の梶さんは、修羅雪以上に修羅雪であった。原作者の私自身が、「修羅雪」というキャラクターは、まさに梶芽衣子のために作り出したのだ・・・と思えてしまうほどであった。

最初の確信のとおり、梶さんは、その妖艶で力強い・・・まさに「修羅の目」でもって、修羅雪の宿命と深い哀しみ、そして意志の強さを、余すところなく表現してくれた。

小池一夫(『修羅雪姫』の原作者)

『修羅雪姫』の魅力は、類稀なる劇画と、梶芽衣子という〝ハードボイルドな女優〟の化学反応が生み出した奇跡なのですが、この原作の素晴らしさについて1973年の『プレイボーイ増刊』に掲載された石原慎太郎の〝上村一夫劇画論〟がすべてを言い尽くしてくださっています。以下、引用です。

プレイボーイ誌の中で、上村氏が描く修羅雪姫が最も魅力あるペイジであるということは、大袈裟ではなく、伝統というものがいかに強じんで常に「現代的」であるかの証しといえるだろう。

つまり、上村氏の描く劇画が読者に伝えるその凄絶な美、エロティシズムには、あきらかに日本古来の伝統性があるのである。例えば、江戸期の浮世絵や、ちかくは、鏑木清方美人画等に、私たちは容易にその美意識の系譜を見ることが出来る。

などと七面倒なことをいわなくても、修羅雪姫の面白さには格調ある美と本質的な凄絶さ、エロティシズムがある。当節氾濫した、もはや破格ともいえる出鱈目なイラストに比べて、氏の劇画のひとこまは絵画としての格調があり、詩情がある。そしてその人物一人一人の、昨今の演技を知らずただものをいい、動くだけの俳優たちに比べて、何と表情豊かなことであろう。

雑誌のあちこちに散見するヌード写真や自動車オートバイ等、つまり最も現代的なはずの風俗に比べて上村氏の描く一人の古風な女がはるかに現代人の嗜好にかなうのも、実は絵画における芸というものの力になるまい。

そしてその芸の力が、戯作された一人の女の異形な生き方に、真実性を与え、その異形な時代の人間にその異形な情想と嗜好から大共感を引き出しているのである。正直言ってこの「修羅雪姫」が映画化され、成功したとしても、私は上村氏の描く劇画から、受ける程の迫力を感じることはないような気がする。

この文章が、なぜ映画化された『修羅雪姫』が、世界中の人々の心を捉えて離さないのかという問いに対する明確な答えにもなると思います。

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修羅雪姫の衣装6

白い菖蒲の花の着物
  • 紫地に白い菖蒲の花の着物、半衿
  • 薄いグレーの帯、紫色の帯締め、後見結び
  • 緋色の裾よけ
  • 珊瑚の玉簪
  • 仕込み刀の蛇の目傘
  • 素足に黒塗りの二枚歯の下駄
  • 濃い紫のお高祖頭巾

DVDのパッケージにもなっている白い菖蒲の花が咲く着物。©TOHO

花札をバックにポーズを決める修羅雪。©TOHO

時すでに遅し!仇敵はすでに墓の中でした。©TOHO

着物のバックシルエット。©TOHO

お高祖頭巾(おこそずきん)もとてもお似合いです。©TOHO

藤田敏八監督。

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修羅雪姫の衣装7

白無垢
  • 白の綸子の着物、半衿
  • グリーンの帯、黄色の帯締め、後見結び
  • 緋色の裾よけ
  • 珊瑚の玉簪
  • 仕込み刀の蛇の目傘
  • 素足に黒塗りの二枚歯の下駄

タランティーノは、梶様と対談し、30分間ずっと手を握り続けていました。©TOHO

なかなかここまで着物と刀が似合う女優は存在しません。©TOHO

体を真っ二つに切断される中原早苗(深作欣二夫人)。©TOHO

作品データ

作品名:修羅雪姫 (1973)
監督:藤田敏八
衣装:記載なし
出演者:梶芽衣子/黒沢年雄/赤座美代子/仲谷昇