ピンク!ピンク!ピンク!
イライザ・ドゥーリトル・ルック11 ピーチピンク・ドレス
- 花と果物のアクセサリーを施したストローハット
- ピーチピンクのジャケットとアンピールラインのドレス
- 白のハイネックのレースブラウス
- グレーのショートグローブ
- 黒のローヒールパンプス
オードリー・ヘプバーンが大好きなカラーのひとつである、ピンクの衣装が立て続けに登場します。この二つのピンクドレスは、アイコニックな3つのスタイル(グリーン・ジャンパースカート、マイ・フェア・レディ・ドレス、イブニングドレス)ほど有名ではありませんが、魅力的なシルエットであることには間違いありません。
意外に知られていない〝究極のピンク・ドレス〟
イライザ・ドゥーリトル・ルック12 ピンクシフォンドレス
- ピンクデイドレス、天女のようなドレス、スリーブのシフォンがラッフルに。オードリーが最も気に入り、もらい受けたドレス
- ラッフルショール
- シフォン・ジョーゼットをふんだんに使った帽子。
- レネ・マンシーニのローヒールパンプス
オードリーが一貫していたのは、飾り立てるよりそぎ落とすほうを良しとしていたことです。
グレース・ミラベラ(元ヴォーグ編集長。1971-1988)
本作においてセシル・ビートンは、ヒギンズ教授を演じるレックス・ハリソンの衣装に関しても最新の注意を払いました。1910年代当時の男性の帽子よりも1.5cmつばを広くしました。それはヘアピースが必要な髪と、日に焼けるのが大好きな彼の性癖をみこしてのことでした。
舞台で何千回もヒギンズを演じてきたにもかかわらずレックスはセリフ覚えが非常に悪く、撮影にあたり、オードリーのキャスティングに対しては失望し、散々文句を言っていました。しかし、作品が完成すると「オードリーが一番だ」と絶賛するようになっていました。
『マイ・フェア・レディ』。それは、オードリーの“最も偉大なる最後の輝き”だったのかもしれません。親友のエリザベス・テイラーが、映画という世界の中で、映画の枠を超えた女神になろうとして果しえなかった『クレオパトラ』(1963)の野望を、彼女は果たしたのでした。本作によって『ローマの休日』(1953)からはじまる彼女の偉大なるキャリアは頂点に達したのでした。
そして、この作品を境に、ファッションも映画もより複雑なものが求められるようになっていったのです。もはや、この作品のラストシーンのようなものは許されない時代が始まろうとしているのです。しかし、映画の偉大性は、それをするに相応しいもの達により、生み出された創造物が、後世の人々に、永遠に、本人達にも思いもよらぬ程の影響を与えるということです。オードリーがいて、ジョージ・キューカーがいてセシル・ビートンがいたからこそ、エドワード朝時代のファッションと美術が見事に再現され、残されることになったのです。時代の空気とファッションを結びつけることが可能なところに映画の偉大性はあるのです。