アラン・ドロン

アラン・ドロン1 『サムライ』(4ページ)

    そして、サムライは、笑いながら死ぬ。

    幻のスマイリング・デス・シーン。

    『サムライ』は、沈黙と直感と行為とを扱った、非フランス的な作品で、言葉は何ら重要ではなく、情感は久々の濡れたようなパリの街の描写をアラン・ドロンの哀愁に充ちた目で尽くしている。この映画が殺し屋の沈黙の中に充填したエネルギーは、たしかに密度が高い。それは何らニヒリズムではない。情熱でもない。キリッとした、手ごたえのある、折目節目の正しい行動の充実感である。

    三島由紀夫『三島由紀夫映画論集成

    ちなみにラストシーンは2種類撮影されました。最後の最後にサムライが笑いながら死ぬシーンです(本当はこちらをメルヴィルは使用する予定でした)。しかし、昔のドロンの主演作で笑いながら死ぬシーンがあったので、現在のラストシーンに入れ替えられました。

    後世の多くの映画に影響を与えた『サムライ』

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    アラン・ドロンの表情の持つ底冷えする恐ろしさ。

    この作品に影響を受けた作品として挙げられるのが、ウェルター・ヒルの『ザ・ドライバー』(1978)、『ウェリアーズ』(1979)、そして、『ストリート・オブ・ファイヤー』(1984)です。他にもジョン・ウーの『狼/男たちの挽歌・最終章』(1989)、ジム・ジャームッシュの『ゴースト・ドッグ』(1999)をはじめ、マーティン・スコセッシ、クエンティン・タランティーノ、北野武、フランシス・フォード・コッポラ、ジョニー・トー、デヴィッド・フィンチャー、リュック・ベッソン、マイケル・マン等の諸作品と挙げるときりのないほどの影響を与えています。

    アラン・ドロンのサムライ・ブランド。

    アラン・ドロンと競演するのは二度目だった。・・・しかし、二回とも失敗だった。ほんとうに、ドロンとバルドーの組み合わせはうまくいかなかった。そもそも、私たちの関係は温かみも共感もないまったく儀礼的な域を越える事がないものだった。彼はひたすら自分の顔とあの有名なブルーの瞳がどう映るかにしか関心がなく、自分の目の前にいる女など、その他大勢と同じ一つの影としか思っていなかったのである。・・・

    彼の表情、あの瞳には、情熱、感情、真実を感じさせるもの、人の心をとらえ、感動させるものはなにもなかった。

    ブリジット・バルドー自伝より

    この作品の本質にあるものが、バルドーの言葉から見えてきます。つまりアラン・ドロンという男性は、恐らくこの作品のような生き方を望んでいた稀有な俳優だということです。そんな彼が1979年より香水事業をスタートさせます。そして、1995年に世界的大ヒットとなるフレグランス「サムライ」をローンチします。その香りのイメージは、『レッド・サン』(1971)でも競演したドロンがリスペクトする三船敏郎をイメージしたものでした(香りからはそんなイメージは全く漂ってきません)。

    そして、2001年には「サムライ・ウーマン」をローンチさせ、大ヒットさせます。ライセンス商品とはいえ、アラン・ドロンがその商品名にサムライとつけたのは、それだけこの作品に対する愛着が深かったからなのです。今の世界中の男性に足りていないものが、この作品を見ると、よく見えてくるのではないでしょうか?男性に許されるスタイリッシュさとダンディズムのバランス。それを楽しむ心。そして、それが儀式になる習慣。本当の意味での男性の美しさが理解できる作品の一つです。


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