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ナンシー・スパンゲン 『シド・アンド・ナンシー』3(2ページ)

    作品名:シド・アンド・ナンシー Sid And Nancy (1986)
    監督:アレックス・コックス
    衣装:キャサリン・クック
    出演者:ゲイリー・オールドマン/クロエ・ウェッブ/ドリュー・スコフィールド



    歌わない反逆のプリンセス

    二人の関係を象徴する有名なデスダンス・フォト。

    セックス・ピストルズのシド・ヴィシャスの〝永遠の恋人〟であり〝パンクの恋人〟と呼ばれたナンシー・スパンゲン(1958-1978)は、アメリカのフィラデルフィア・ペンシルヴァニアの中流階級で生まれました。赤ん坊の頃から決して泣き止まない子で、少女期は暴力的でかなりの問題児でした。そして、ついに11歳で放校処分になります。15歳でハサミでリストカットし自殺を図り、統合失調症と診断されます。更に1974年には、おとり捜査官からマリファナを購入し、コロラド州から永久追放になります。

    1975年、17歳で家出し、ニューヨークへ。そして、ストリッパー兼売春婦となり、完全なジャンキーになってしまいます。この頃彼女が好きだったバンドは、エアロスミス、バッド・カンパニー、ラモーンズ、ニューヨーク・ドールズでした。そして、1977年にニューヨーク・ドールズの追っかけとしてロンドンに移住し、シド・ヴィシャスと出会うことになります。二人の交際期間は僅か19ヶ月間(ナンシー殺害により終焉を迎える)でした。しかし、この19ヶ月間は普通の人々にとっての何十年もの期間に値する濃厚さと破滅性に満ち溢れていました。

    そんな狂気という言葉が相応しい彼女の生き様にシンパシーを受ける若い女性が増えてきています。そういえば、かつて、昔にそんな時代がありました。2000年代初期に大流行した矢沢あいの『NANA』によって生まれたパンクスタイルブームです。

    美しさとは、完璧な容姿のことではなく、その人らしさを発揮すること。

    ボビィ・ブラウン

    この名言こそ、彼女に相応しい言葉だと思います。決して容姿端麗ではなく、何か才能があるわけでもなく、スタイルが良いわけでもない。でも「10代にして、70年代の狂気を体現する存在として、20世紀の狂気の象徴」にまでなったナンシー・スパンゲン。「狂いの美学」を否応なしに感じさせる常人の域を越えたその眼力の強さ。私たちがなぜ彼女から目を離せなくなるのか、それは現在の「保護された狂気」の中で生きるアメリカのスーパーシンガーとは、真逆の「野生の狂気」を彼女が感じさせるからなのです。



    パンクファッションとは、レザー×SMミックス

    ブロンディのデボラ・ハリーとナンシー・スパンゲン。

    まさに典型的な女性のパンクスタイルがこれです。

    映画『シド・アンド・ナンシー』においての、ナンシーのファッションは、ミニスカート主体のものでした。SMプレイで使用されるPVC(ポリ塩化ビニル)のミニスカートとレザーブーツとレザージャケットにベレー帽の合わせ方が素敵です。クロエ・ウェッブ(1956-)が演じるナンシーにそれが似合っていたかはともかくとして、このスタイリングはレザー・ジャケットもどきの合皮ジャケットが氾濫する現代のプチプラ・スタイルとは、真逆のテイストに満ち溢れています。

    ファッションとは、生き様の反映であり、偽者であっても、レザージャケットを着たいと考える人と、安いヴィンテージのレザージャケットを見つけ出し、それを着る人の生き様は全く違ってくるものなのです。



    ドラッグクイーンのようなナンシーの両性具有性

    ナンシー・スパンゲンのメイクはとにかく塗りたくる!

    つまりは、女性らしさを失わせるメイク。

    まさに悪魔のようなアンドロギュヌス性に満ちています。

    ビアズリーの『サロメ』の中の両性具有の神を髣髴とさせる。

    ナンシー・スパンゲンという存在の響き。それは間違いなく、ルールを無視してコスメを塗りたくる(ドラッグやアルコールで酩酊してそうなったのかもしれない)姿勢が、女性よりも、ドラッグクイーンのような雰囲気を生み出し、女性であって女性でないアンドロギュヌスの魅力をナンシーに与えています。

    それは、彼女の生き方。いいや、野生の本能に根ざしたライフスタイルにレザーアイテムと、アニマル柄が組み合わさり、洗練とは無縁であるが、堕ちようがないどん底の人生しか生きてこなかった女の「モンスター」のような存在感を示しています。人生の全てが下に向かっていた女性と、同じくそういう生き方をしてきた男性が、運命的に出会い起きた奇跡。そんな奇跡をものの見事に逃がしてしまい、破滅していくその様。そうですこのカップルには、明らかに〝破滅の美学〟が存在するのです。



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