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【ゲラン】ミツコ(ジャック・ゲラン)

ゲラン
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ミツコ

原名:Mitsouko
種類:パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ジャック・ゲラン
発表年:1919年
対象性別:女性
価格:30ml/44,000円

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悲劇にも似合う魔性のピーチの香り

1960年広告。©GUERLAIN

1965年広告。©GUERLAIN

最もゲランの香りで興味深いのがミツコです。ミツコはフレグランスの進化に多大なる影響を与えた創造物です。当時シプレーが主流ではなかった時期にとても大胆で良くできた調香を行っています。

そのピーチ・ノートは今でも「ワオ~」としか言いようのない、まさに別の惑星からやって来たかのような香りです。それはとてつもなく大胆なチョイスとしか言いようがなく、私がゲランで成し遂げたい精神が凝縮されています。

ティエリー・ワッサー、2008年。

モダンシプレの歴史は、1917年にコティ社から発売された「ル シープル」から始まりました。それはフランソワ・コティが開発したノートで、キプロス島に生息する植物が香料として取り入れられています。そのシプレノートを、2年後の1919年にゲランの三代目調香師ジャック・ゲランが更に進化させたのが「ミツコ」でした。

これを身に纏うと、なんとも言えない神秘的なオンナを作り出することが出来る反面、複雑な香料の組み合わせで作られているため、自分に相応しい使い方の難易度が高い香水。だからこそ、「ミツコ」を飼い慣らす人は〝香水の達人〟と言われます。

一般的な男性は、女性用のフレグランスを身に纏うことを嫌がりますが、例えば「ミツコ」は男性に対して奇跡的な香りの効果を生み出してくれます。それは「シャリマー」も同じです。

ジャン=クロード・エレナ

「ミツコ」によって、史上初めてフレグランスにピーチの香りが与えられました。それは合成香料アルデハイドC-14(γ-ウンデカラクトン、別名ピーチアルデハイド、1908年より商用可能になる)をジャスミンとブレンドすることによって生み出されたものです。

オークモスとアルデハイドC-14の〝最高なハーモニーとバランス〟を見つけ出すために1年以上かけて数百回の数え切れないほどの試作が繰り返されました。シプレノートの香水は、基本的にユニセックス仕様です。

女性の肌が持つべき秘密を生み出してくれる香り。

ジャン=ポール・ゲラン

ミツコを愛用したスターを以下に列挙致します。チャールズ・チャップリンイングリッド・バーグマンエヴァ・ガードナーブリジット・バルドー、バレエ・リュスの創設者セルゲイ・ディアギレフ、1930年代のハリウッドのセックス・シンボル、ジーン・ハーロウといった錚々たる面々です。

ジーン・ハーロウの夫だった映画会社MGMのプロデューサー、ポール・バーンは、1932年9月5日、全裸死体でバスルームで発見されました。その時バスルームには、妻ジーンの愛用する「ミツコ」が充満していました。

この事件は謎が多いのですが、現在ではポールの元愛人による殺害と言われています。このような悲劇にも似合う魔性の香水。幸せと不幸せの次元を越えた香水それが「ミツコ」なのです。

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八杉恭子の香り

1968年。©GUERLAIN

1978年にテレビドラマ版『人間の証明』が放映されました。松田優作が主演した映画版(1977年)を遥かに凌ぐ大傑作といわれている伝説の人間ドラマです。後にDVD化された時に、この作品を見て、映画版とはまた違う、物語の熱量を感じました。

特に、高峰三枝子様と岸本加世子、林隆三、絵沢萠子が素晴らしく、戦後の日本において女性が生きていくことの業を感じさせました。

そんな三枝子様扮する八杉恭子が愛用していた香水が「ミツコ」でした。そして、物語のキーアイテムにもなっていました。終戦の焼け野原で、パンパンとして生きた恭子が、黒人兵との混血の息子を産み、その子と引き離され、その過去を封印し、戦後の日本でのし上がっていく恭子の御守りであり、心のパートナーだった「ミツコ」。最後には、この香水により、彼女の息子殺しが露見し、それを告白し、〝人間の心を取り戻す香り〟・・・

日本人から見た「ミツコ」。それは国籍を越えた悲恋を感じさせる、酸いも甘いも知り尽くした大人の女性に相応しい香りのように思えます。

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なぜミツコという日本女性の名前がつけられたのか

1974年広告。©GUERLAIN

ところで、ミツコのスペルは実に奇妙です。Mitsukoではなく、Mitsoukoとなっています。それはこの香水の名が、ジャック・ゲランの友人の作家であるクロード・ファレール(1876-1957)の小説のヒロインから引用されたためでした。

ちなみにクロードは、リヨンで陸軍大佐の息子として生まれ、日本から父親が持ち帰ってきていた浮世絵や陶器に囲まれ、強い日本文化に対する憧憬を抱き大人になりました。

そして、海軍士官になったクロードは、1899年9月13日に長崎港に上陸し、5日間日本に滞在しました。以後、彼は日本を「私の約束の地」として溺愛することになりました。

そんなクロードから常々日本の話を聞かされていたジャック・ゲランもまた日本に対して強い憧憬の念を育んでいたのでした。

私の叔父(ジャック)は私に、日本海海戦の一日が、トラファルガーの海戦の丁度100年後に起こり、ロシア帝国崩壊のはじまりになったことをよく話して聞かせてくれました。

叔父にとってクロード・ファレールの小説の中で描かれた日本の姿は、彼の感情を強烈に揺さぶり、「ミツコ」が生まれたのでした。

ジャン=ポール・ゲラン

1919年に発表された『ラ・バタイユ』は、1905年に日露戦争でバルチック艦隊を撃破する日本海海戦前後の長崎を舞台にした物語でした。この物語に登場する大日本帝国の若き海軍将校ヨリオカ侯爵の夫人であるミツコ侯爵夫人は、英国海軍士官フェアガンと国籍を越えた不倫関係に浸ります。

最終的に夫とフェアガンは日本海海戦で戦死し、ミツコは自らの不倫に対する複雑な感情から、京都の尼寺で尼になるのでした。

ちなみに、この作品がフランスでベストセラーになった要因として、ミツコの存在よりも、バルチック艦隊を撃破した日本海海戦の勝利の際に、ハラキリをしたという海軍士官の創作が、フランス人の「騎士道」と日本人の「武士道」を結びつけ心を打ったためでした。

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もう一人のミツコ=クーデンホーフ光子



そしてもう一人、1919年当時のオーストリア=ハンガリー帝国の貴族、ハインリッヒ・クーデンホーフ=カレルギー伯爵に嫁いだ日本人女性クーデンホーフ光子伯爵夫人(1874-1941)も、この香水のアイコンでした(彼女の生き様を「ミツコ」の香りに重ね合わせる人々がそれだけ多かったということです)。

この香りの最も重要な点は、ジャック・ゲランの日本文化に対する神秘と憧憬の気持ちが、ひとつの永遠の香りを生み出したという点にあります。だから、この香りを身に纏うことは、日本人女性の中に眠る古来の美しさを呼び覚ますことでもあるのです。

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香水にとって最も重要な要素は「ミステリアス」

1990年代広告。©GUERLAIN

1997~1998年広告。モデル:アナリーセ・ソイベルト。©GUERLAIN

松任谷由実 今はゲランの「アクア アレゴリア マンダリン バジリック」を使っているのですが、私に合う香りなのか、ご意見をうかがいたかったのです。

エリザベット・ドゥ・フェドー ベリーナイス!ただ、ゲランを選ばれるなら「ミツコ」もいいと思いますよ。

松任谷由実 私に合いますか?

エリザベット・ドゥ・フェドー 100年前にムッシュ・ゲランがクロード・ファレールが書いた『ラ・バタイユ』のヒロインであるミツコの名を冠して作った香水です。そして、この香りを好んだことで有名なのはニジンスキーなど、貴婦人よりむしろ芸術家たちでした。ロシアのバレエダンサーやオペラ歌手が愛用してきました。それは、これがクリエイティビティに直結する香りだからではないかと私は考えています。

松任谷由実 どのような香りだったでしょうか?

エリザベット・ドゥ・フェドー シプレ系で、シアージュ(残り香)がとても素晴らしい。ただ、簡単な香りではありません。誰にでも似合うものではなく、自分の世界を持っている人でなければ合わない香りだと思います。・・・香りはそれだけで成立するものではなく、つける人の肌とミックスされて初めて完成するものです。ただ、今日、そういったクオリティを持つフレグランスはあまり多くありません。肌になじませるのですから、原料がとても重要なのです。ナチュラルなものがどれだけ配合されているかが鍵なのですが、現在、その割合は下がっているのです。

『ユーミンとフランスの秘密の関係』松任谷由実

「ミツコ」の香りの重要なベースだったオークモスが、2007年にEUの決議により供給制限がかけられ、使用できなくなり、合成香料で代用されることになりました。そのためこの時期の「ミツコ」の香りは、エドゥアール・フレシェによる再調香により、旧来のものと全く違ったものになりました。

しかし、五代目調香師ティエリー・ワッサーにより2013年、再び旧来の香りに近いものが再調香されたのでした。オークモスに含まれるアトラノールとクロロアトラノールを合成香料で再現するために、ロベルタ社の協力の下、ピスタチオを役立てたのでした。

ボトルデザインは、バカラのデザイナー、ジョルジュ・シュヴァリエ(1894-1987)により、1912年に「ルール ブルー」(「ミツコ」と同じデザイン)の時にデザインされたものと、ゲランの公式では記載されているのですが、ジョルジュがバカラのデザイナーになったのは1916年なので誤記だと思われます(通説では、レイモンド・ゲランがデザインしたと言われています。)

ただ事の真意はともかくとして、このボトルデザインには、アールヌーヴォーとアールデコの精神の見事なコントラストが見られます(第一次世界大戦後の供給制限により新作ボトルが製造できなかったため)。

特に“反転したハート”の形をしたキャップが神秘的です。神秘性と悲劇性がミックスされ、倒錯した多幸感を感じさせる香水「ミツコ」。いいえ、「ミツコ」さん、もしくは「ミツコ」様と敬称つきで呼びたくなる香水。まさにこの香水の魅力はそんな〝敬称をつけたくなる点〟にあるのではないでしょうか。

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ミツコ様はどんな香り?

1920年代の広告。©GUERLAIN

ミツコの香りの構成は、ナエマと同じとてもシンプルです。共に12の香料で構成された香りです。

ジャン=ポール・ゲラン

時代を反映させた香りです。第一次世界大戦前までは女性は男性と競い合う必要はなく、柔らかさ、優しさ、女性らしさという特性を大切にしていれば良かったのですが、戦争が全てを変えました。ズボンを履き、男性のように生きることを求められたのでした。

そして、戦争後、シプレはポピュラーになりました。なぜならフローラルやフロリエンタルよりも力強い香りだったからです。

シルヴェーヌ・ドゥラクルト

ミツコの香りを理解するために重要なキーワードは「シプレ」です。このシプレとはベルガモット、ローズ、ジャスミン、オークモス、パチョリ、ラブダナムをブレンドし生み出される香調であり、グレの「カボシャール」、ディオールの「ミス ディオール」などが代表的な香りです。

このミツコという香りの特徴は、「歴史上はじめてピーチの香りに感情を与えた」点にあります。

それはシプレの特徴とも言える、神秘性を生み出すオークモスとシダーに、パチョリとラブダナムが生み出す思慮深い奥ゆかしさ。そこに、人格を与えるピーチ(アプリコットのような)の香りが注ぎ込まれることにより、この香りは感情を持つに至ったのです。

現在発売されているミツコは、トップのシトラスが強く、オークモスの持続性も合成香料のためかなり劣るため、感情を持つ香りの複雑さは失われ、分かりやすい感情の流れを持ったミツコ様となりました。しかし、たとえ、ミツコ様が現代女性の洗礼を受けようとも、この香りの魅力はいまだに失われることはないのです。

ミツコを身に纏い死んだ人はいなかった。しかし、この香りを身に纏ったことからたくさんの赤ちゃんが生まれた。

ルカ・トゥリン

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ミツコ」を「シプレの手本」と呼び、「お気に入りやおすすめの香水はと訊かれたなら、かならずミツコと答える。すると大まかにいって3つの反応が返ってくる。調香師はあくびをし、初心者はメモを取り、マニアはステレオタイプな奴だという。実際、お気に入りの絵画を聞かれて「モナリザ」と答える(私は違う、念のため)のようなものだ。」

「ミツコの歴史は、それ以降の調香師たちに多大な影響を与える革新と模倣という2つの技術の完成系を描き出す。1919年に発売され、一般的にはジャック・ゲランが、日本、あるいは日本女性にインスパイアされて生まれたと言われている。」

「幾度となくいわれているように、ミツコは、2年先んじて発売して大絶賛されたフランソワ・コティの「シプレ」の発展形である。3つの要素をベースにしたシプレのアコードはあまりに完璧なので、90年経った今でもその創造力を越えるものは現れていない。それはベルガモット、ラブダナム樹脂、そしてオークモスで、それぞれシトラス様樹脂、甘いアンバー様樹脂、そしてビターな樹脂の香りを生み出す。3つの要素は樹脂によって結びつき、等分の円グラフを描いている。今ではシプレと呼ばれているその香調は、香水には欠かせないバランスとイメージを担うようになる。」

「ジャック・ゲランがγ-ウンデカラクトンのピーチノート、大量のアイリス、それに明らかにされていないがほかに20種類ほどの香料をシプレに加えたことはよく知られている。中でもウンデカラクトンは大きな違いを生み出した。温かみと色味をほんの少し抑えたティファニーランプ(ステンドグラス)のような効果が現れ、しかもエステルをベースにしたフルーツ・ノートとは違い、香りが長持ちする。」

「ジャック・ゲランの補強はつまり、シプレ・ノートを極上品にまで高めたといえるだろう。ブラームスの熟成した室内楽を想わせる深みを生み出したのだ。ミツコもまた、EUの科学物質恐怖症の追跡を逃れて生き残った。今にも処分を見直しますという顔をして。結局は、偉大なる調香師エドゥアール・フレシェがミツコをEUの規則に服従させることになるのだが、それでもみごとというほかはない。しかし長持ちという点ではかつてのミツコには及ばない。」と5つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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ミツコ 有田焼スペシャルボトル

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2016年5月1日に創業400年を迎えた有田焼とコラボした「ミツコ 有田焼スペシャルボトル」が誕生しました。

創業1804年の窯元「弥左ヱ門窯」(七代目弥左ヱ門)のモダンブランド「アリタポーセリンラボ」によりデザインが施された75mlのオードトワレは、45,000円で限定500個のみ販売されました。

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香水データ

香水名:ミツコ
原名:Mitsouko
種類:パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ジャック・ゲラン
発表年:1919年
対象性別:女性
価格:30ml/44,000円


トップノート:マンダリン、ベルガモット、レモン、ネロリ
ミドルノート:ライラック、ピーチ、ジャスミン、イランイラン、ローズ、クローブ
ラストノート:アンバー、シナモン、ベチバー、オークモス、パチョリ、シダーウッド、ブラックペッパー、アンバーグリス、ベンゾイン、サンダルウッド、ミルラ、ムスク

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