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ミッシェル・リー/カレン・モク1 『天使の涙』1(2ページ)

    作品名:天使の涙 Fallen Angels 堕落天使 (1995)
    監督:ウォン・カーウァイ
    衣装:ウィリアム・チャン
    出演者:ミッシェル・リー/カレン・モク/チャーリー・ヤン/レオン・ライ/金城武



    煙草の煙に包まれた作品=永遠の瞬間を求める名もなき女の物語

    ミッシェル・リー(右上)の美貌に負けなかった唯一の作品。

    ひたすら出演者が煙草を吸う物語でもある。

    そして、煙草の煙がこの作品のひとつの重要な語り部の位置を占めている。

    『組んで155週目、初めて会った』という抜群の掴みのモノローグから殺し屋と女エージェント(連絡係)と言葉が話せないモウの3人の物語が始まります。3年間一度も会わずに、連絡係とその殺し屋の関係を継続してきたこの二人。1961年に建設された複合ビル重慶大厦(重慶マンション、チョンキンマンション、姉妹作である『恋する惑星』の原題は〝重慶エクスプレス〟)の中にある安宿のワンルームで生活する、生活感がほとんど感じられない名前のない女エージェント。この作品の登場人物には、金城武(=モウ=武)以外には名前がありません。

    切れ長だが、ポルトガル系のハーフだけあって東洋人離れしたその大きな目に、シャギーの入ったストレートの黒髪が魅力的なミッシェル・リー。そのファッションを形成するものはほとんどチープなケミカルであり、デカめのアクセサリー、カラフルなネイル、そして、煙草の香りで身を包んでいます。無気力でけだるい雰囲気を漂わせながら、エネルギーを補充するかのようにただひたすらハイネケンと煙草を手に持ち、ぼんやりと麺をすすり、セックスには興味はなく(人間関係にも全く興味はなく)、ただオナニーに励むという実際のところ、そのモチーフは1990年代の日本をはじめとするアジア・欧米諸国のオタクの女性版的なキャラクターです。

    カットされたシーン。サングラス姿の女エージェント。

    そんな女エージェントが、生温い麺を無表情にすするように、「帰る時、彼に送ってと頼んだの。久しぶりでバイクに、そして人とこんなに近く、すぐ着いて降りるのは分かってたけど、今のこの暖かさは永遠だった」とモノローグして、バイクを運転するモウの煙草の煙と共にこの物語は終わりを迎えます。



    世界一美しいと言われた女ミッシェル・リー

    1989年度ミス香港、身長171㎝。圧倒的な美貌。

    男性の理想というよりも、女性の理想を全て詰め込んだような人。

    女エージェントを演じるミッシェル・リー(1970-)は、1989年にミス香港に輝き、1995年当時、絶世の美貌とスタイルで、中華圏一の美女「楊貴妃の再来」とまで言われた人です。しかし、その美貌ゆえに、本作出演までは、お飾り程度の役柄(『スウォーズマン 女神伝説の章』(1992)と『レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター』シリーズ(1992-1993)に代表される)をつとめてきました。そんな彼女が、本作において、結果的には、唯一と言ってもいい程の女優としての存在感を示したのでした。

    撮影に対して、クリストファー・ドイル(1952-)に、ウォン・カーウァイはこう指示を出しました。「前回(『恋する惑星』)は、ロングレンズを使ったから、今回は超広角レンズを使おう」と。そして、撮影の初日は、ラストに女エージェントが、煙草を片手に麺を食べるシーンから始まりました。

    「良いアイディアだけれど、超広角レンズを使うと、役者がきれいに映らないよ」というドイルの言葉に対する答えが、映像の中で、ただただ美しく愛らしかったミッシェル・リーという女優に新たな一面を与える結果となったのでした。



    1995年、エナメル・ボディコンの天使が、夜の香港に舞い降りた

    浮遊するような独特のアングルと編集が、新たなる世界観を生み出しました。

    エディターズバッグを持つボディコン美女。

    クリニークの口紅をつける女エージェント。しかし、誰とも会う予定はない。

    クントンロード沿いにある第一芬蘭館というサウナがあるビルの屋上の小屋が、隠れ家です。

    殺し屋が寝ているベッドに横たわる女エージェント。

    網目の大きな網タイツが中国美女にはとても似合う。

    チープな場所で、美女がチープなファッションに身を包むクールさ。

    向かいの電車の窓からオナニーシーンをスローで抑えるスリリングなシーンに注目。

    オナニー中も煙草は離さない。

    ミッシェル・リーは、この一作により90年代のファッション・アイコンとなった。

    重慶大厦の一室で、麺をすするボディコン美女の図。

    女エージェント・ルック1 エナメルボディコン
    • 黒のエナメル・ミニボディコン、サイドにスリット入り
    • 黒のチェーンショルダーバッグ、パテントレザー
    • 赤茶色のエディターズバッグ
    • 黒エナメルのスティレットヒールパンプス
    • チョーカー
    • 黒の網タイツ
    • クリニークの口紅

    大きなエディターズ・バッグを持った、派手なファッションに身を包んだ絶世の美女が登場します。彼女に名前はありません。そして、辺鄙な建物の屋上にある小屋で、突然せっせとベッドメイキングや床掃除を始めるのです。どうやら、相棒の殺し屋が不在中に彼の隠れ家をせっせと掃除しているようです。

    彼女の仕事は、組織と殺し屋を繋ぐ連絡係です。この役柄の造詣は、明らかに1993年からケイト・モスによって始まるウェイフルックヘロイン・シックの流れを汲んでいます。ちなみに当初、彼女の役柄は、覚醒剤中毒を強調するという方向で考えられていました。だからこそ、彼女が煙草を咥える冒頭と、ラストの麺を食べるときの煙草を持つ手が震えているのです。



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