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【ケンゾー】フラワー バイ ケンゾー(アルベルト・モリヤス)

ケンゾー
©KENZO PARFUMS
ケンゾー
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フラワー バイ ケンゾー

原名:Flower by Kenzo
種類:オード・トワレ
ブランド:ケンゾー KENZO
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2000年
対象性別:女性
価格:30ml/6,800円、50ml/9,300円、100ml/14,000円

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高田賢三引退後、最初の香り

レイチェル・カービィ、2000年。©KENZO PARFUMS

レイチェル・カービィ、2003年。©KENZO PARFUMS

この香りの中の奇跡とは、フレッシュさとムスキーさの融合に成功したところにあります。私は、香りの中に〝太陽と水〟の要素を生み出したいと常々考えています。そして、この香りには、その〝太陽と水〟がフローラルに生命力を与えていることを肌と嗅覚で実感できるのです。

アルベルト・モリヤス

「フラワー バイ ケンゾー」は、1999年に、KENZOの創立者・高田賢三(1939-2020)が引退するにあたり、ケンゾー・パルファムのクリエイティブ・ディレクターに就任したパトリック・グエージが、賢三の愛した花、ポピー(けし)をモチーフに、〝究極のケンゾーイズム〟を体現する香りとして生み出した香りです。

2000年に発売され、現在においても、KENZOで最も売れているフレグランスです。

アスファルトにも咲くことの出来るポピーは、都会で生きる女性たちの力強さを体現する〝アスファルト・ジャングル〟の花です。そして、ギリシア神話の絵の背景や、江戸時代には浮世絵にも好んで描かれていた美しい真紅の花です。

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一輪の花を持つ少女の〝フラワーパワー〟の香り


この香りのインスピレーションの源は一枚の写真でした。それは、1967年10月21日に撮られた一人の少女の写真です。彼女は銃剣を持つ兵士たちに一輪の菊の花を差し出しています。

彼女の名は、ジャン・ローズ・カシミール。当時17歳のこの少女は、その日アメリカのワシントンD.C.で行なわれた10万人を超えるベトナム戦争反対デモに参加し、フランス人フォトグラファー、マルク・リブーが撮影した写真の被写体に、本人が知らぬうちになっていたのでした。

そして、この写真は、「フラワーパワー=フラワーチャイルド」を象徴する写真となりました。

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フラワーのパワーをボトルに封印せよ!

パラマウント・ホテル、ニューヨーク

アーヴィング・ペン、1968年。

パトリック・グエージは、フィルメニッヒ、ジボダン、IFFの三社と新しい香りについて打ち合わせをしたときに、新しい香りに求める三つのコンセプトを提示しました。

そのコンセプトとは、先のフラワーパワーの写真と、1990年にリニューアルされたパラマウント・ホテルの玄関の大理石の壁に咲く赤い薔薇、そして、ニック・ナイトとアーヴィング・ペンが撮影したポピーの写真でした。

そして、コンペティションの結果、フィルメニッヒ社の三人の調香師に絞られ、選ばれたのがアルベルト・モリヤスにより調香された試作品でした。

モリヤスが見せた3つの試作品のうち、「ポアプル(Pourpre、赤紫)」と名づけたものでした。それは天然のヴァイオレット・リーフ、アカシア・フラワーのエッセンス、酢酸リナリル、ゲラニオール、シトロネロール(ジャスミンやローズに含まれる分子)を使用したものでした。

そこに、〝赤〟の要素を生み出すために、天然と合成のバニラをブレンドしたものと、ヘリオトロピンと酢酸ベンジルを混ぜ合わせました。

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〝天使のムスク〟=ムスセノンデルタ

©KENZO PARFUMS

この香りはとてもオールドファションなパウダリーの香りです。しかし、奥深くから、ヴァイオレットリーフとムスクのコントラストを感じ取って頂けるでしょう。力強いグリーンと軽やかさの対比です。

ムスクは、フィルメニッヒで新たに開発したムスセノンデルタをびっくりするほど大量に10%使用しています。

このムスクは非常に高価なのですが、フィルメニッヒは、この香りこそが、この香料の素晴らしさをプロモートする絶好の機会だと考え、特別に破格の値段でケンゾーに提供しています。

アルベルト・モリヤス

この香りは最後の微調整にすごく手間がかかった香りでした。それは4000回に近い試作をモリヤスは求められ、最終的にはパトリック・グエージが、三番目に出来上がった試作品を商品化することに決めたのでした。

モリヤスは、その一連の流れについて、「えてして、香りを生み出すときに、気合が入りすぎて、微調整を繰り返すうちに、元々の素晴らしい部分を破壊してしまい、何の変哲もない安全な香りへと向かっていこうとする誘惑に負けるのですが、パトリックはその誘惑を見事に振り切りました」と回想しています。

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フラワー・バイ・アジアンビューティー

©KENZO PARFUMS

©KENZO PARFUMS

20年も経つと当たり前のように見えることをしてみせた人のことを天才と呼びます。そして、この香りを生み出したアルベルト・モリヤスは間違いなく天才と呼ばれるに値する人です。この香りによって、〝ローズとヴァイオレットという一昔前の組み合わせ〟に新たなる生命を与えたのでした。

それはローズとヴァイオレットが生み出すパウダリー感に、フレッシュグリーンとムスキーさを融合させ、〝太陽と水〟の要素を生み出し、太陽の光の中での浮遊感と、水中の浮遊感を同時に感じさせる香りを生み出したのでした。

ポピーの花自体には匂いはありません。しかし、二つの花が生み出すパウダリー感が、真紅のポピーが持つ「空を飛べそうな」浮遊感を生み出しているのです。

そんな〝空飛ぶ花の香り〟は、ウォータリーなメロン(シクラメン・アルデヒドによる)が恐る恐るドアの半分から顔を覗かせる少女のようにしてはじまります。すぐに彼女は全身を現し、実はキリっとしたブルガリアン・ローズであることを肌で体感させてくれます。

やがて、ヴァイオレット・リーフが最初はグリーンにやがて、パウダリーにローズの花びらを柔らかに宙に舞い散らせながら、スパイシーなピンクペッパーと甘いジャスミンが太陽の光のように全てを包み込んでゆきます。どこかノスタルジックな空気が生み出されてゆきます。

ベースのバニラが冷たい甘さを運び、ムスセノンデルタはクリーンなエアーを運んでくれます。そして、そんな中で、インセンスが厳かな存在感を放ちます。

バニラとムスク、インセンスの全ての優しい余韻が、凛とした一輪のパウダリーなポピーを心の中の花瓶に挿し込んでいくように溶け込んでゆくのです。

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アルベルト・モリヤスの神技

スー・チー、2013年。©KENZO PARFUMS

この香りの最大のポイントは、史上初めて使用された、フィルメニッヒにより開発された「天使のムスク」=ムスセノンデルタなのですが、ブルガリアンローズとヘリオトロピンが大量に使用され、更に最高品質のヘディオン=Hedione High Cis(ヘディオンを強力にしたもの)が使用されており、これがヴァイオレット・リーフとブレンドされると今まで存在しなかったような浮遊感を伴うフローラルアコードを生み出すことが可能になるのです。

さらにアルベルト・モリヤスの恐ろしい所は、念入りに、ムスセノンデルタに、これまたフィルメニッヒの自慢のムスクであるシクロペンタデカノリド、アンブレットリド、ハバノリドを合流させ、ムスクに太陽の輝きと気品と官能性といったあらゆる側面を与えているところにあります。

さらにさらに・・・

この香りの隠し味は、間違いなくピンクペッパーです。私はこの香料を「プレジャーズ」でも同じ役割で使用しているのですが、スパイシーなだけでなくサフランのような香りを加えてくれます。

アルベルト・モリヤス

最後に、この香りには、バイオバニリンというバイオテクノロジーで生み出されたバニリンが史上初めて使用されています。それは甘くなく、少しビターでアニマリックです。

かくして、新しいパウダリー・フローラル・オリエンタルの香りが誕生したのでした。この香りは、ローズのようで、ヴァイオレットのようでもあり、パウダリーで、スパイシーかつバニリックなのです。

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この瞬間、一輪の花は芸術を語り始めた

©KENZO PARFUMS

植物はまっすぐには育たない。カーブを描き育つもの。

セルジュ・マンソー

一輪挿しの花瓶の様なボトル・デザインはセルジュ・マンソーによるものです(最初のインスピレーションは、高層ビルでした)。サイズによって挿されたポピーの造詣が違い、小さなサイズから大きなサイズまで並べると花が咲いていく瞬間がよく伝わる画期的かつ幻想的なデザインです。

ちなみにモリヤスはこのボトルをはじめて見せられたとき、びっくりしてこう叫んだといわれています。「信じられない!ボトルではなく、花そのものだ!なんて詩的で日本的なんだ!5日たってこのボトルを見たら、1cm成長してそうだ!」。

タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「フラワー バイ ケンゾー」を「メロンウッディ」と呼び、「過去を思い起こし得ないものは、過去を繰り返すように運命づけられている。悲しいことに、あらゆる芸術の中では香水はいちばん記憶喪失症。」

「香水の歴史に記憶する価値がないんじゃなくて、伝えられないのだ。きれいにコピーしたり、CDに焼きつけることはできないし、口ずさむことも書き留めることもできない。たいていの若手画家は、ミケランジェロの「アダムの創造」の本物は見ていなくても版画ポスターは見たことがあるはずだけど、オリジナルの「エメロード」を嗅いだことがある若い調香師は、ほとんどいないだろう。」

「もちろん、アルベルト・モリヤスはキャロンの「ロイヤル ベイン ド シャンパーニュ」をほぼ完璧に暗記していて、それを複製したものにヘディオンを少し加えてフラワーを作った。でも誰も気づいていないみたい。」

「ロイヤル ベイン ド シャンパーニュはさっそうとした甘いパウダリーウッド。めまいがするくらいのメロン、ミュゲ、ヘリオトロピンで飾り立てている。香りは甘美でユーモアがある。タキシードでタップダンスを踊っている感じ。アメリカの作曲家ガーシュインの曲(魅惑のリズムがぴったり)に匹敵する香水。」

「実際には古代ギリシャ彫刻をコピーしたローマのブロンズ像のように、フラワーは密かにクラシックな価値を守っている。オリジナルのエメロードはとっくの昔に忘却の彼方だけれど。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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歴代のフラワー・ガール達

2013年、中国人のスーパーモデル、ミン・シー(1989-)がキャンペーン・モデルになりました。その前のキャンペーン・モデルは『トランスポーター』(2002)『クローサー』(2004)で有名な台湾人映画女優スー・チーや、フランス在住の日本人ファッション・モデル源利華でした。

©KENZO PARFUMS

そして、2018年からのキャンペーン・モデルは、韓国の女優キム・テリです。ケンゾーという日本人の名前のブランドなのですが、今、日本人女性のスケール感が、小さくなっているということなのかもしれません。

芸能界を見ても、ファッション界を見ても、日本人女性は、個性のない、ファッション・アイコンになりづらいつまらない存在として国際的に認識されています。

若い女性が40人以上集まろうとも、アナウンサーが何をしようとも、そこから生み出されるものは、倦怠以外の何物でもありません。もはやケンゾーは日本人には届かぬ存在になってしまったのかもしれません。

だからこそ、この香りは、今、最も日本人女性に必要な香りなのかもしれません。群れずに、妥協せずに、孤独の中で死ぬことも恐れない女性だけが、真の美しさを勝ち取ることが出来るんだということを教えてくれる香りです。以下歴代フラワー・ガール達です。

初代:スー・チー

スー・チー、2007年。©KENZO PARFUMS

スー・チー、2008年。©KENZO PARFUMS

二代目:源利華

源利華、2010年。©KENZO PARFUMS

源利華、2010年。©KENZO PARFUMS

三代目:ミン・シー

ミン・シー、2015年。©KENZO PARFUMS

ミン・シー、2015年。©KENZO PARFUMS

四代目:キム・テリ

キム・テリ、2018年。©KENZO PARFUMS

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香水データ

香水名:フラワー バイ ケンゾー
原名:Flower by Kenzo
種類:オード・トワレ
ブランド:ケンゾー KENZO
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2000年
対象性別:女性
価格:30ml/6,800円、50ml/9,300円、100ml/14,000円


トップノート:ブラックカラント、サンザシ、ブルガリアン・ローズ、マンダリン・オレンジ
ミドルノート:オポポナックス、ジャスミン、パルマ産ヴァイオレット
ラストノート:バニラ、ホワイトムスク、インセンス

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感想(4件)

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