究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ

『007 慰めの報酬』Vol.2|リーバイスとY-3を着るダニエル・クレイグ

ジェームズ・ボンド
ジェームズ・ボンド
この記事は約8分で読めます。
当サイトではアフィリエイト広告を利用しています

華麗なる中年男性のカジュアル・ダウンの教科書

中年男性の魅力は、細部に宿ります。その意味において、ピアース・ブロスナンの演じた先代のジェームズ・ボンドは、必要以上にスーツスタイルを徹底していたので野暮ったさを感じさせる瞬間もありました。

ダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドは、ファッションに細心の注意を払っているため、そういった野暮ったさを微塵も見せません。そんなスタイルが、若い女性にとって、中年男性のゆとりを感じさせるのでしょう。

オンオフのファッションの切り替えの上手さが、ダニエル=ボンドの魅力であり、歴代ボンドの中でも、オフスタイルのセンスの良さは際立っています(歴代のジェームズ・ボンドは、オフスタイルになると急に拍子抜けするスタイルが多かった)。

そこに、魅力的な悪党、ウィットに富んだ台詞、壮大なる世界征服を目論む悪の秘密結社、色気のあるボンドガール、秘密兵器が組み合わされたとき理想のボンドムービーは誕生するのです。

ボンドムービーに小賢しいリアリズムなぞ必要ありません。水資源を独占しようとする悪党などにはワクワクしないのです。どこまでもアンチ・リアリズムで、もう一度宇宙まで飛んでいって欲しいくらいなのです。

Y-3のウォータープルーフ・モーターサイクル・ジャケット。

スポンサーリンク

21世紀のスティーブ・マックイーン

スティーブ・マックイーンを彷彿させるバイク・シーン。

ジャケット・パンツ・シューズの絶妙な配色がわかるショット。

そして、さりげなく袖からのぞくオメガ。

本作のバイクシーンは、全てがスティーブ・マックイーンへのオマージュに満ち溢れています。スポーティなブルゾンを着て、チャッカブーツを履いて、バイクに跨る姿。

この姿があったからこそ、ダニエル・クレイグは21世紀の「キング・オブ・クール」の地位を継承することに成功したのでした。第三者が自分から見い出すイメージを捉え、ただの物まねではなく、〝新しい象徴〟を生み出した所にこの作品の大いなる意義があるのです。

スポンサーリンク

ジェームズ・ボンドのファッション3

スティーブ・マックイーン・スタイル
  • サンスペルのダークネイビーのリヴィエラ・ポロシャツ
  • クリーム色のリーバイス306 STA-PREST(スタプレ)ジーンズ、スリムフィット、ジップフライ

  • チャーチのダークブラウン・スウェードのライダーⅢ、ラバーソール
  • プラダのブラック・サフィアーノ・レザーベルト
  • Y-3のポリエステルのウォータープルーフ・モーターサイクル・ジャケット、ブラック
  • オメガのシーマスター・プラネット・オーシャン・600mコーアクシャル・クロノメーター
  • トム・フォードのサングラス、TF108アビエーター

サンスペルのポロシャツを着て、壮絶な肉弾戦をするボンド。

このシーンを見て『ボーン・アルティメイタム』を見ているのだろうかと考えてしまいました。

トム・フォードのサングラス、TF108アビエーター

Y-3とは、アディダスとヨウジヤマモトのコラボブランドです。

渋すぎる!絶妙なレイヤード。

スポンサーリンク

『ドクター・ノオ』を愛したスパイ。

007 リビング・デイライツ』(1987)以降、ショールカラーのタキシードを着なかったジェームズ・ボンド。

『007/ドクター・ノオ』のショーン・コネリー

ここで、ショーン・コネリーの『007/ドクター・ノオ』(1962)のタキシードに対するオマージュが現れます。これこそが、ダニエル・クレイグの果たしたかった野望その二(キング・オブ・クールに続く)だったのです。

全く同じファッションを、現代の最先端のシルエットで着こなすことにより、初代ジェームズ・ボンドであるショーン・コネリーから21世紀のジェームズ・ボンドの称号を継承したのでした。

ダニエル・クレイグという俳優は、トム・フォードというデザイナーのチョイスといい、後の作品におけるブルネロクチネリのチョイスといい、カジュアルなスタイルがスーツ・スタイル並みにカッコ良い所といい、クリスティアーノ・ロナウド並みの引き締まった肉体管理といい、自分のスタイルをどんどん創造していくセンスに長けた人です。

スポンサーリンク

ジェームズ・ボンドのファッション4

タキシード
  • トム・フォードのミッドナイトブルーのタキシード、一つボタン、ショールカラー、サイドベンツ、モヘア・カシミヤ・トニック
  • トム・フォードのフロントプリーツシャツ、ダブルカフス、スプレッド・カラー
  • トム・フォードのバットウィング・スタイルの黒のボウタイ
  • リネン・ポケット・ハンカチーフ
  • オメガのシーマスター・プラネット・オーシャン・600mコーアクシャル・クロノメーター
  • チャーチのフィリップ、ブラックカーフレザー、カップトゥ・オックスフォード

六代目ボンドの魅力は、殺し屋の〝狂気〟も兼ね備えている所です。

ディテールが分かりやすい写真。

バットウイングのようなボウタイに注目!

スポンサーリンク

悪党たちのファッション・ブランドは何でしょうか?

常に何かにオドオドしている悪党ドミニク・グリーンを演じたマチュー・アマルリック(1965-)の衣装はヨウジヤマモト(Y-3)です。

ちなみにこの悪役のイメージは、当時のフランス大統領ニコラ・サルコジと元英国首相のトニー・ブレアを組み合わせたものでした。

カトラー・アンド・グロスの0425

写真では小悪党の雰囲気を感じさせるドミニク・グリーン。

斜め後ろにいるのは、ボンドガールのオルガ・キュリレンコ。

何気にエルヴィスの持つクラッチがカッコいい。

グッチのブラウン・スエードのホースビットローファー。

ドミニク・グリーンの右腕エルヴィスを演じたアナトール・トーブマン(1970-)は、グッチを着て、ジュエリーはクロム・ハーツをつけています。

クロムハーツに特別作らせたネックレス。

フリーダ・ジャンニーニ時代のグッチのスーツ。

最後に、カルロス大佐に扮するフェルナンド・ギーエン・クエルボが付けているサングラスが、実に珍しいヴィンテージ・サングラスです。その名もボリス・ベッカー4804Cです。ボリス・ベッカーとは、有名なドイツのテニス・プレイヤーで、ポラロイド社が、1980年代に彼の名を冠したサングラスを4種類発売しました。

ちなみにこのカルロス大佐役をアル・パチーノが演じる可能性もありました。

作品データ

作品名:007 慰めの報酬 Quantum of Solace(2008)
監督:マーク・フォースター
衣装:ルイーズ・フログリー
出演者:ダニエル・クレイグ/オルガ・キュリレンコ/ジェマ・アータートン/マチュー・アマルリック