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アラン・ドロン2 『冒険者たち』3(3ページ)

アラン・ドロン
アラン・ドロン
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作品データ

作品名:冒険者たち Les Aventuriers (1967)
監督:ロベール・アンリコ
衣装:パコ・ラバンヌ
出演者:アラン・ドロン/リノ・ヴァンチュラ/ジョアンナ・シムカス

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アラン・ドロンだけが目立たなかったからこそ・・・

左から、アラン・ドロン、ジョアンナ・シムカス、リノ・ヴァンチュラ。

アラン・ドロンのマウンテン・ブーツ姿が珍しい。

ドロンにはどうしようもないほどイライラさせられた。あの当時(1961年)、彼は共演者のことなどこれっぽっちも気にせず、自分の美しい容貌とブルーの瞳のことしか考えない醜悪な俳優だった。・・・ラブシーンでアラン・ドロンが決して私を見ようとせず、私の後ろに設置されたライトばかりを見つめて、ブルーの瞳を際立たせようとしていたので、私も同じようにした。ドロンの後ろにいたピエール・マッシミに熱いまなざしを送ったのである。

・・・残念なことである。というのも今では私は、アラン・ドロンのことをジャン・ギャバンにとってかわることが出来るもっとも優れた、もっとも美しいフランス男優の一人だと思っているからである。彼の才能は反駁の余地のないものだし、彼の容姿も性格と同様よくなり、強靭になり、美しくなった。

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1967年、アラン・ドロン(1935-)は30代になっていた。この作品が最も魅力的なのは、アラン・ドロンだけが目立ちすぎずに、女優が決してただの飾り物ではなく、一女性としての魅力を発散しつつ、一歩引いている二人の男優たちもその魅力を発散させているところにあります。そこには脂の乗り切った30男(アラン・ドロン)と、人生を自分のために費やしている40男(リノ・ヴァンチュラ)。そして、そこに現われる理想に燃える20女(ジョアンナ・シムカス)という、年齢の違う男女が3人集まって生まれる兄弟愛のようなムードがあります。3人の唯一の共通点は、大きな夢を持ち、それがひとつ破れたということです。

この作品は、20代の若い女性はどういう男性に惚れるのかという教本の役割を果たしています。そして、映画の中でフラれる役柄を演じるアラン・ドロンは非常に珍しく、それはハリウッド進出に失敗したばかりの夢破れたアラン・ドロン自身の姿と重なります。そして、結果的には、アラン・ドロンは、ハリウッド進出の挫折により、その翳りのある美男子ぶりに最終的な磨きをかけることが出来たともいえます。本作と同年の『サムライ』といい、翌年1968年にチャールズ・ブロンソンと共演した『さらば友よ』といい、この時期のアラン・ドロンはハリウッド・スターにはないタイムレスなダンディズムに包まれていました。

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ボマー・ジャケットを着たアラン・ドロン

10代の時に本物の海兵隊員としてインドシナ戦争で戦闘経験を持つ。

スカイブルーのサファリシャツがかなりオシャレ。

そして、この素晴らしいボマージャケット。

アラン・ドロン・スタイル1
  • B-3フライトジャケット(別名ボマージャケット)
  • スカイブルーのサファリシャツ
  • 茶色のレザーベルト
  • ベージュのトラウザー
  • マウンテンブーツ

アラン・ドロンについて語られるとき必ず出てくる経歴がフランス外人部隊出身であるという経歴ですが、これは全くのデタラメです。実際のところ、アラン・ドロンは、17歳のとき、自身の不良行為と母親の再婚等で、フランス海兵隊(元々は飛行気乗りになりたかった)に入隊するも、窃盗などにより素行はかなり悪く、除隊し刑務所行きか、最前線行きかという問題にまでなり、最前線行きとなります。そして、第一次インドシナ戦争(7万5千人のフランス軍兵士が戦死した壮絶な戦争)で、1954年のディエンビエンフーの戦いが終わった後に実戦部隊に投入されました。

アラン・ドロン自身、最終的にジープを窃盗し、不名誉除隊になったこの時代の過去について詳しく語ることは少なく、この壮絶な戦争で10代の多感な時期を過ごしたアラン・ドロンは、若くして既に、人生の暗い闇の部分も経験してきたのです。そんな彼が身につけるミリタリー・ファッションには、何ともいえない危険な男の香りが漂います。

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リノ・ヴァンチュラの包容力

リノ・ヴァンチュラ・スタイル1
  • ブラウンのコットンベルベットのジャケット、襟の一部と袖がリブ素材
  • 赤のポロシャツ
  • ダークグレーのトラウザー(後でベージュパンツ)

本作のリノ・ヴァンチュラ(1919-1987)もまたすごく魅力的です。男子も40歳も過ぎれば、自分のライフワークに対して黙々と実行し、孤独に対しても、それを愛するようにならなければいけません。家庭を大切にする子煩悩な40代の男子に対して、若い女性は魅力を感じません。ダンディズムというのは、ある種の不純物から生まれる要素であり、それは中年男性の幼児性や危険な香りをベースにしたものです。

かつては、家庭を持っていたのかもしれないが、今では自分のライフワークをただ黙々とこなし、前進する40代の男性に対して、「特に予定がない」と言った少年のような好奇心旺盛な表情を持つ20代の美女。二人は孤独を紛らわせるために知り合ったのではなく、孤独を愛する中で知り合ったのでした。それは20代の男女に共通していることですが、この年代のうちに一回り違う男女と恋愛が出来ることは幸せです。なぜなら40代になって一回り上の人との恋愛は出来ないのですから。