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ファッション・スカウター Fashion Scouter – ファッション・コラム

アパレルの終焉
アパレルの終焉
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ファッション・スカウター

今の時代、1万円のファッション・アイテムに対してさえもじっくりと購入を考える時代になりました。3万円なら、なおじっくり、5万円以上ならば、十分にラグジュアリーな買い物をしたことになります。それは不景気ばかりが原因ではなく、日本中に沢山の商品が溢れており、もしかしたら他にも良いものが見つかるかもしれないというささやき声が、耳元で聞こえるからなのです。

モノが溢れています。ファッション・スナップも垂れ流されています。そして、お客様は、ファッションにお金を使うとき、安いものに対しては、無頓着になり、1万円以上のものに対しては慎重になっています。そんな時代に、ラグジュアリーなファッション・アイテムを見に来て頂けるというのは、すごく有難い事なのですが、ただ有難がっているだけでは、あなたの存在価値はないも同然になります。

あなたが、販売員としてそこに雇われている理由は、間違いなくお客様に商品を販売するという目的のためにあるのです。しかし、ここで問題になるのは、あなたは、お客様に対して的確な商品販売が出来ているか?という点です。

人当たりの良いルックスと物腰、言葉遣い、そして、商品知識は当然として、何よりも重要なもの。それは、お客様にご来店頂いたときに、30秒で、お客様のファッション戦闘値をはじき出すことなのです。「え?お客様を値踏みするのですか?」と不審に思う方もおられるでしょうが、ここではっきりと断言しておかないといけないのは、販売員は、お客様を無意識に値踏みしているのです。それは否定しようがしまいが絶対的な反応です。

一度でもラグジュアリーな商品を扱う販売員をすると分かりますが、なんとなくお金を持っているお客様とそうでない冷やかしの違いが見えてきます。そして、相手により接客を変えていきます。しかし、ファッション・スカウターとは、その次元の話をしているのではありません。

ファッション・スカウターがはじき出す数値は、お客様が身につけているファッション・アイテムの予想総額、センス、使用状況によってはじき出されます。それを入店60秒内にじっくりと観察し、はじき出すことによって、あなたは、お客様に色々な提案をすることが出来るのです。お客様の表面的なファッション値を弾き出せる販売員は、そのお店のアイテムを100%紹介することが出来ます。しかし、ファッション・スカウターを持たぬ販売員は、お客様に商品の提案が出来ません。

明確な例をあげましょう。お店を訪れたお客様が、そのお店のアイテムをぱっと見ただけで、何がいいかなどと分かるわけがないのです。ただその日の気分で、ビビッと来るアイテムに巡り合えたら購入するに及ぶだけなのです。良き販売員は、待ってはいません。人間は、見ているようで見ていない生き物なのです。ファッション・スカウターを持つ人間は、そのスカウターを働かせます。「靴はホンモノのルブタンだな。そして、バッグはヴァレンティノか。チャームはなしだな。すごく綺麗に使っているな。この香水は、すごくこだわって選んでいる感じの匂いがする。クルジャンかエレナだろうか?それとも昔から愛用しているヴォカリーズか何かだろうか?リップはイヴサンローランかディオールだろうか?ネイルがナチュラルということは硬い仕事についているのだろうか?それにしてもスカートが綺麗なシルエットを保っているな。クローゼットはきちんと整理整頓されていそうだ。トップスのレイヤードの上手さは、さては買い物慣れしてるな」なんていう風に自分の中で、ハテナマークが生まれているので、そのハテナマークの回答を導き出す会話をしているうちに自然と、お客様が、探しているもの、今興味のあるもの、それ以上の人生観と言った突っ込んだ部分に、会話は流れるように進行する訳なのです。

そして、そのお客様から、「あなたのような販売員さんは初めてです。今後ともよろしくお願いします」という言葉を頂けるのです。ラグジュアリー・ファッション・ブランドにおいて、ブランド名の力は50%であり、そこに販売員の力が50%加味され、商品は売れていく訳なのです。

ファッション・スカウターを持つと言うのは、お客様を値踏みするのではなく、お客様に使って頂きたいという感覚を共有するために行う、スタイリング作業の一環なのです。今全国的に支店の増えたラグジュアリー・ブランドの販売員に決定的に欠けているのが、このスカウターを装着している人員なのです。

1人の人間がファッション・スカウターを持っていると、10人分の働きをします。一方、1人の人間がファッション・スカウターを持っていないと、10人分の足を引っ張り、何千人ものお客様を失います。これからの、ラグジュアリー・ファッションを販売する販売員が、持たなければ、いけないもの。それは、何よりもまず、ファッション・スカウターなのです。そのためには、ファッションに対する本質を知らなければならないのです。